LA CIUTAT INVISIBLE

まぼろしの王都

まぼろしの王都

まぼろしの王都』エミーリ・ロサーレス河出書房新社

画廊を経営するエミーリのもとに突然届いた「見えないまちの回想記」。それは、18世紀イタリアの建築家ロセッリによる手記だった。エミーリ故郷には、作られるはずだった大都市の遺跡が点々と残っており、どうやら手記はその都市についてのものらしい。少年期にその探索に夢中になったが、思春期に入ってから薄れた想いが、手記によって再燃する。一方、その回想記に深く関わりのある画家ティエポロの幻の作品を巡る騒動にエミーリも巻き込まれる。手記を読みながら、18世紀と自らの青春時代を回想していく……

歴史の謎の探求と、それに対応するかのような自らの青春の回想、という構成は『
風の影〈上〉 (集英社文庫)
』に似てるかな。
読みやすいし、こういう話は好きなんだけど、どうも歴史のうねる波に身を奪われる感じがしなかった。最後に辿り着いた真実は静かな浜辺でなく、大津波か大渦巻きに飲み込まれる、というラストをこの手の歴史ものに求めてるのに対して、これは、ずっとその写真を眺めている感じ。たぶん、主人公自体が手記読んでるだけで、基本的に何もしないからなんだよね。謎の追究に流される代わりに、状況と女の言葉にはやたらと流されやすい(笑)。それと、スペイン史と美術史に疎いんで、史実を補完する作者の想像力がピンと来ないのが大きい。


放棄された都市計画、幻の絵画、主人公の出自、青春の思い出が円環となり、ラストで見事に閉じるものの、全体的にあっさりしていて、イマイチ燃えるものがありませんでした。
うまくまとまってるんだけどなぁ。


海外って、この手の自伝風作品(もしくは作者が主人公)って多くない?