BOOK OF THE DEAD

死霊たちの宴〈上〉 (創元推理文庫)

死霊たちの宴〈上〉 (創元推理文庫)

死霊たちの宴〈下〉 (創元推理文庫)

死霊たちの宴〈下〉 (創元推理文庫)

ランド・オブ・ザ・デッド』鑑賞記念! ということで、
『死霊たちの宴(上下)』ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター編〈創元推理文庫F〉読了


ゾンビものアンソロジー
ロメロの世界観を踏襲したものもあれば、全く違う設定のものもある。


収録作品
上巻
・『序』……ジョージ・A・ロメロ
・『編者序文』……ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター
・『花盛り』……チャン・マコンネル
・『森のレストラン』……リチャード・レイモン
・『唄え、されば救われん』……ラムジー・キャンベル
・『ホーム・デリヴァリー』……スティーヴン・キング
・『始末屋』……フィリップ・ナットマン
・『地獄のレストランにて、悲しき最後の逢瀬』……エドワード・ブライアント
・『胴体と頭』……スティーヴ・ラズニック・テム
・『選択』……グレン・ヴェイジー
・『おいしいところ』……レス・ダニエルズ
下巻
・『レス・ザン・ゾンビ』……ダグラス・E・ウィンター
・『パヴロフの犬のように』……スティーヴン・R・ポイエット
・『がっちり食べまショー』……ブライアン・ホッジ
・『キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの書』……ジョー・R・ランズデイル
・『サクソフォン』……ニコラス・ロイル
・『聖ジェリー教団 VS ウォームボーイ』……デイヴィッド・J・ショウ
・『わたしを食べて』……ロバート・R・マキャモン


個人的お気に入りは、
・『始末屋』
 手練れの特殊部隊。
 彼らは女子供でも容赦なく始末するが、その正体は?
 単に始末屋という単語が好きなだけという説も(笑)
 文春から出た『ウェットワーク』の原型短篇。
・『胴体と頭』
 世界中に猛威を振るう謎のウイルス。
 それに感染すると、体が言うことを聞かなくなり、
 頭を異様な速さで動かしはじめる。
 看護婦のイレーヌは、患者の少年は意識だけはあるのではないかと考えるが……
 あまりゾンビものって感じはしないけど、気持ち悪い。
 病院が舞台と言うこともあって、『サイレントヒル』みたい。
・『おいしいところ』
 超肥満のゾンビ。
 彼が女のゾンビとセックスすると、妊娠して、なんと生きた子どもを出産!
 食欲を抑えて、大きくなるまで育てようとする。
 けっこう笑える。
 ゾンビものは、エロスとタナトスというわけじゃなく、
 食欲→性欲ということなのか、セックスと絡めた話が多い。
・『パヴロフの犬のように』
 地球生態系を再現した施設、エコスフィア。
 外ではゾンビ現象が吹き荒れていたが、施設内は取り敢えず自給自足ができている。
 しかし、ある日、ある男が食糧を求めて施設にやってきた……
 これはちょっと映像で見てみたい。
・『キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの書』
 賞金稼ぎのウェレン。
 賞金首を捕まえて、護送する途中、ゾンビを従えた男に捕まってしまう。
 彼は新興宗教の教祖で、
 二人に実験用の血液を採取させて欲しいと言ってきた。
 ランズデイルっぽい、ピカレスクもの。
 操れるゾンビにミッキーマウスの帽子を被せるって悪趣味だなぁ。
 教団の尼さんがエロくてよいです。
・『聖ジェリー教団 VS ウォームボーイ』
 以前から死体を食べるのを好んでいたウォームボーイ。
 彼は墓地の周辺にバリケードを張り巡らせ、城塞化していた。
 毎日のようにゾンビを狩っては、それを食事にしていた。
 ある日、ゾンビを率いた教祖が現れ、向かってきた!
 これも新興宗教ネタ。
 主人公のウォームボーイのキャラがかなり気持ち悪くて◎。
・『わたしを食べて』
 ゾンビだらけになった世界。
 男は、酒場で女性と出会う。
 二人は店を出て、彼女の家に行く。
 そして、お互いの肉を食べ合う……
 ゾンビの世界の愛の形を描いた短篇。
 非常に肉欲的であると同時に、幻想的でもある作品。


読み終わった結論としては、ゾンビものは映像の方が面白いですわ。
死体が動くってこと自体が、ヴィジュアル的なのか、どうも字だとイマイチ。
そういう意味で、『バイオハザード』はゾンビジャンルとしては大傑作なんだと思う。


あと、新興宗教とゾンビの絡みの作品が多いんだよね。
日本だと、『バイオハザード』とか『ヘルシング』みたいに軍隊に投入する流れが自然なんだけど、
そういう作品は逆になかった。
ゾンビがそもそも審判の日に死者が蘇る、てのがベースにあるから、その違いなのかねぇ?