SILVER SCREAM

シルヴァー・スクリーム 上 (創元推理文庫)

シルヴァー・スクリーム 上 (創元推理文庫)

シルヴァー・スクリーム 下 (創元推理文庫)

シルヴァー・スクリーム 下 (創元推理文庫)

映画にまつわるホラー作品を書いてくれ――そんな編者スカウの呼びかけに馳せ参じた,ホラー界のスター作家たち。向こう見ずなふたりの若者を待ち受けていた,悪夢の夜を措くランズデール「ミッドナイト・ホラー・ショウ」。映画に一生を捧げた老人の妄執が哀切なブロック「女優魂」。映画が大好きだった少年の物語が異様な展開を見せるガートン「罪深きは映画」。そのほかバーカー「セルロイドの息子」,ウィルスン「カット」など,いずれも忘れがたい怪作・傑作が一堂に会する,映画ホラー・アンソロジー
・「幻燈」……ジョン・M・フォード
・「カット」……F・ポール・ウィルスン
・「女優魂」……ロバート・ブロック
・「罪深きは映画」……レイ・ガートン
・「セルロイドの息子」……クライヴ・バーカー
・「アンサー・ツリー」……スティーヴン・R・ボイエット
・「ミッドナイト・ホラー・ショウ」……ジョー・R・ランズデール
・「裏切り」……カール・エドワード・ワグナー
・「〈彗星座〉復活」……チェット・ウィリアムスン


かつて映画のヒーローとして活躍するも,その栄光も過去のものとなった老人。都会の片隅でひっそり暮らしていた彼が,連続殺人鬼と対決するマキャモン「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」。特殊メイクアーティストを襲う奇怪な出来事を描く,スペクター「特殊メイク」。鋭利な剃刀のごときマシスンの掌編「サイレン/地獄」。さらにシェクリー「バーゲン・シネマ」,キャンベル「廃劇場の怪」など,当代最高のホラー作家たちが生み出した,この世にあってはならない悪夢が満載の,映画ホラー・アンソロジーl
・「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」……ロバート・R・マキャモン
・「バーゲン・シネマ」……ジェイ・シェクリー
・「特殊メイク」……クレイグ・スペクター
・「サイレン/地獄」……リチャード・クリスチャン・マシスン
・「映画の子」……ミック・ギャリス
・「危険な話、あるいはスプラッタ小事典」……ダグラス・E・ウィンター
・「スター誕生」……ジョン・スキップ
・「廃劇場の怪」……ラムジー・キャンベル
・「カッター」……エドワード・ブライアント
・「映魔の殿堂」……マーク・アーノルド

どうでもいいことなんだけど、文庫の短篇集(アンソロジー)はだいたい電車で読むようにしてるんだよね。持ち歩きやすいし、途中で閉じやすいし。
だから、読了までにちょっと時間がかかる。
で、電車に乗るのは、だいたい映画に行く時なんだよね。しかも、たいていSFかホラー系w


そんなジャンル映画をテーマに編まれたホラーアンソロジー
この手のアンソロジーはたいてい玉石混交なんだけど、これだけの収録数がありながら、質の高い粒ぞろい。
テイスト的には〈Hot Blood〉シリーズに似たアンソロジーで大変おいしゅういただきました。
ホラー作家は、ホラー映画が好きなことが多いだろうし、原作提供や脚本など業界に関わっている人も多いので、色んな意味でリアリティのある作品が多いのも特徴w


その中でもお気に入りは、
・「カット」……F・ポール・ウィルスン
原作小説をめちゃくちゃにした映画を撮った監督。
作者から恨み言を言われるが無視。
しかし、体に異常が……
ウィルスンはよっぽど腹に据えかねたんだろうなぁw
アンソロジー内でブードゥーネタが多いんだけど、これが一番痛々しい。


・「女優魂」……ロバート・ブロック
何百本もの映画に出演したという、年老いたエキストラ役者。
彼ははるか昔に亡くなった、恋人だった女優の作品を観に来ていた。
老人は、画面の中の彼女がこちらに挨拶するというのだが……
ノスタルジックな幻想譚。彼らを探したくなるよねw
見覚えあると思ったら、 『新・幻想と怪奇』*1にも収録。


・「罪深きは映画」……レイ・ガートン
厳格なキリスト教一派の町で祖父母と暮らす少年。
そこは映画も禁止されているのだが、自分を捨てた母親が女優なので、映画に興味津々。
ある日、学校の先生がビデオを見せてくれることになり……
第一のサイコ展開は予想どおりだけど、オチのサイコ展開はなかなかいい。
映画は人を狂わせますよw


・「アンサー・ツリー」……スティーヴン・R・ボイエット
いわくつきの映画監督の、幻の作品の上映会。
彼の研究者がそれを見て……


・「ミッドナイト・ホラー・ショウ」……ジョー・R・ランズデール
既読なんだけど、やっぱ面白い。
超愛犬家小説w


・「裏切り」……カール・エドワード・ワグナー
美人ではあるが、ショービジネス界ではパッとしない女優。
彼女は、同じく売れない役者の彼のために体を売ることまでして尽くす。
そしてとうとう、彼はスターダムに乗るが、彼女は捨てられ……
カール・エドワード・ワグナーは短篇集出て欲しいんだよなぁ。
解説にもあるけど、「プラン10・フロム・インナースペース」は超好き。


・「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」……ロバート・R・マキャモン
これも読むの何度目だよ、という感じだけど、何度読んでも見張り男は涙腺に来る。
主人公はパルプヒーロー、アパートの管理人と犬がキャップとバッキー、この見張り男は原著が出たばかりの『ウォッチメン*2に引っ掛けてるってことはない?
相棒たる黒人ダンサーの名前が、アメイジング・グレイスでまたアメコミっぽいんだよね。


・「サイレン/地獄」……リチャード・クリスチャン・マシスン
掌編二編。
「サイレン」が鬼畜エロでお気に入り。


・「危険な話、あるいはスプラッタ小事典」……ダグラス・E・ウィンター
スプラッタ映画の題名を並べつつ、それに引っ掛けたエピソードが続き、最終的には大変嫌な自体に。
日本でも毎度論じられる表現の自由の物語であり、ジャンル愛好家としては危機感を覚えないといけない作品。


・「廃劇場の怪」……ラムジー・キャンベル
店の倉庫の壁に穴が開き、泥棒が入ってこないかと調べると、その向こうはとっくに廃墟になった劇場。
調べに入ると、何か気配が……
このゾワゾワ感はわかるよなぁ。
幼少時、田舎で庭遊びしていて、白い石を拾ったらスズメの頭蓋骨だった瞬間を思い出す。


・「カッター」……エドワード・ブライアント
田舎街の映画技師。
彼は配給されるフィルムを勝手に編集して、それを上映していた。
片思いしている女性がいるのだが、彼女はビッチで彼にはまるで見向きもしない。
彼女の誕生日に食事に誘おうと考えているのだが……
同じような話を読んだ記憶があるなぁ、と思ったらドン・ダマッサ「改竄」*3でした。
映画編集ものっていいよね。


・「映魔の殿堂」……マーク・アーノルド
潰れたドライブインシアター
そこにふとしたことから出会った三人が、ドライブインシアターを復活させる。
時代を先取りしたサブカルチャーの発信地となり、続々と人が集まるが、新興宗教団体がその土地を狙っていた……
ビューティフル・ドリーマー*4のような、終わらない文化祭的作品。ラストは友成純一みたいだけどw
成功にともなって、上映される作品が、だんだんとメジャーなものが増えていくさまに涙。
でも、いまだにドライブインシアターってどういうものかピンと来ないんだよね。