MEMOIRS OF A GNOSTIC DWARF

グノーシスの薔薇

グノーシスの薔薇

グノーシスの薔薇』デヴィッド・マドセン〈角川書店〉読了


16世紀、ルネサンス爛熟期のローマ。
レオ10世に仕えることになった小人のペッペ。
異端のグノーシス派であり、教皇庁の真の姿を知る彼の手記に綴られた、
数奇な人生とレオ10世の死の真相とは?


美と酬、聖と俗、正と邪は全てが表裏一体、それどころか、全てが視点が違うだけで、
やっていることは何ら変わらない。
金をばらまき、乱痴気騒ぎ。
ラファエロレオナルド・ダ・ヴィンチのような天才たちでさえ、
その真の姿は下品で淫ら。


ペッペが敬愛していたレオ10世の描かれ方が凄まじい。
いわゆる教皇というイメージとはほど遠い、大食漢、男色、浪費家。
それが、かえって非常に人間くさく、魅力的とさえ思える。


それらの肉体全てが、ペッペの信仰するグノーシスの教義が非難しているものの具現。
ペッペはその中心で、精神の光を見つけることができるのだろうか?


非常に読み応えがある歴史物。
ダ・ヴィンチ・コード』のお陰で、この手の歴史ミステリが多数訳されるようになったのは嬉しいけど、
いい加減、それを売り文句にするのはやめてほしい。全然違うし。
種村季弘のエッセイを小説にしたような感じ。
ハリウッド的なリーダビリティは、やはり『ダ・ヴィンチ・コード』にはかなわないけど、
結構ずっしりとしていながら、途中で飽きることもなく読了できた。
神聖で高貴なところなどまるでなく、キャラクターも情景も、ひたすら俗っぽいのが魅力なのかな。