2012年3月号

S-Fマガジン 2012年 03月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2012年 03月号 [雑誌]

今月の特集は、「2011年度・英米SF受賞作特集」


翻訳は4本。今月はどれもアタリ
・「雲海のスルタン」……ジェフリー・A・ランディス
シオドア・スタージョン記念賞受賞作
金星の支配者から正体を受けた女性科学者と、助手役の技術者。
しかし、その支配者は彼女と婚約しようとし、更になにか企んでいるようで……
いつもとちょっと雰囲気違うけど、クラウドシティのような光景にリアリティを持たせているのは彼らしい。
女はわかんないな、というテーマをランディス風味にした感じ(笑)


・「火星の皇帝」……アレン・M・スティー
ヒューゴー賞ノヴェレット部門/アシモフ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作
地球に残した家族を亡くした火星作業員。
葬儀に帰ることも出来ず、しばらくは重い鬱状態に。
しかし、過去に着陸したNASAの探査機に積まれたライブラリーを発見してから、様子がおかしくなり……
久々のスティールで、久々に涙腺に来る。
フィクションの持つ力、というわかりやすいテーマがあるんだけど、
それ以上に、みんな、こういうの好きだよね! ああ、好きさ! 
ラースと、その彼女*1火星版という感じ。
というわけで、スティールは補完しようかなぁ。


・「アウトバウンド」……ブラッド・R・トージャーセン
アナログ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作
地球が燃え尽きるほどの戦争が始まり、両親と別れて、木星行きの船に乗った幼い兄妹。
しかし、木星で攻撃で船が攻撃され……
ストレートな冒険成長譚なんだけど、展開はひじょうにドライで、予定調和を考えてると驚かされる。
文字通り機械的な戦争と少年の成長がコントラストになっている。
個人的には『タウ・ゼロ』*2とちょっと印象が似てたかな。


・「女王の窓辺にて赤き花を摘みし乙女〈前篇〉」……レイチェル・スワースキー
ネビュラ賞ノヴェラ部門受賞作
戦地で命を落とした魔術師。
しかし、彼女の魂は眠りを許されず、王女の召喚に応じて蘇らせられ……
この味わいは記憶にあるけど、ル=グウィンあたり?
男女が完全に分かれている(らしい)世界で、そこから受ける生理的違和感が、血の描写と合わさって印象的。
セクシュアリティとともに、文化や歴史の変遷も目撃していくことになる。
後篇が楽しみ。


SF SCANNER特別版は、
『ダルウィーシュ館』と『ばね足ジャックの怪事件』を翻訳希望!


大森望の新SF観光局」は、おやすみ


堺三保アメリカン・ゴシップ」は、今季のドラマは大豊作?
『ワンス・アポン・ア・タイム』って『FABLES』*3と似てるね。


「SF挿絵画家の系譜」は、小阪淳
SFM的にリアルタイムで知ってるイラストレーターが登場。思いの外若い!


「サイバーカルチャートレンド」は、ワイヤレス給電。
いつも気になってるんだけど、間に入ったら感電しちゃうの?


「サはサイエンスのサ」は、進化論が進化しにくいのは(その2)


「センス・オブ・リアリティ」は、
金子隆一は、ストラディバリウス
香山リカは、エンディング・ノート


「乱視読者の小説千一夜」は、おやすみ


「現代SF作家論シリーズ」
第14回は、礒部剛喜による光瀬龍論。


「SFのある文学誌」
うつぼ船、いいよね。


「MAGAZINE REVIEW」は〈アナログ〉誌
"Therapeutic Mathematics and the Physics of Curve Balls"グレイ・ラインハート
"Helix of Friends"カール・フレデリック
"Of Night"ジャネット・キャサリン・ジョンストン
"The Boneless One"アレック・ネヴァラ=リー
が面白そうだった。


来月の特集は、「ベストSF2011」上位作家競作