A CLOSED BOOK
- 作者: ギルバートアデア,Gilbert Adair,青木純子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本
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ブッカー賞なども受賞している有名作家のポール。
彼は事故に会い、顔をひどく損傷し、目も失った。
彼は自伝的作品を書くために、秘書兼代筆者を雇う。
やって来たのはジョン・ライダーという男。
完璧とは言い難いが、人当たりも悪くないし、
気むずかしい彼に腹を立てることもなく、甲斐甲斐しく働いてくれる。
信頼が結ばれ、もはやジョンのいない生活も想像できなくなっていたが、
ネクタイが掛けてある順番が記憶と違っていたり、
代わりに取材に行ってもらったうのだが、自分の記憶と彼の語る言葉では微妙に変わっていたり、
聞かされるニュースも意外なものばかり。
自分は目だけでなく、記憶も衰えてのか?
そして、何か居心地の悪いものを感じ始める。
ジョン・ライダーは何者なのか?
文章は台詞と独白文しかないため、読者は盲人のポールの様子を追体験できる。
ジョンの容姿も何をしているのかもまるでわからず、ただ言葉だけが聞こえる。
これがかなり怖い。
ポールにとって、外の世界を形作っているのはジョンの言葉だけなのだ。
トラファルガー広場の4隅には3体の像があり、一つは空いているはずなのだが、
ジョンが取材に行ったところ、最近になって4体目が立ったという。
ポールはこれを信じるしかないわけで、
日本人読者としては3体しかなかったというのも知らないから、なおさらわからない。
ジョンの言っていることは本当なのか、嘘なのか……
本自体もそんなに長くない上、台詞しかないからすぐ読み終わる。
かといって、内容が薄いかというと、そうではなく、
最初から緊張しっぱなし。
これは映像化は無理とは言わないまでも、同じ緊張を与えるのは難しいだろうなぁ。
ラジオドラマが一番かな。
ラストも、「ああ、なるほど」と満足。
オススメ。
同じくアデアの『作者の死』を読もうと思ったけど、どこにしまったんだ?