THE SHADOW OF REICHENBACH FALLS
ライヘンバッハの奇跡 (シャーロック・ホームズの沈黙) (創元推理文庫)
- 作者: ジョン・Ｒ・キング,夏来健次
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/07/11
- メディア: 文庫
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
スイスのマイリンゲンで、のちに幽霊狩人として知られることになる21歳のトマス・カーナッキは、美しい女性アンナ・シュミットに出会う。意気投合した二人は、ライへンバッハの滝ヘピクニックにいくが、なんと滝の上で二人の男が争い、片方が突き落とされるのを目撃する。川を流れてきた男は奇跡的に一命をとりとめるが、記憶を失っていた。そして息をつく間もなく、彼らは謎の男に追われることになり……。ホームズの大空白期間、カーナッキの青春、悪の首魁モリアーティー教授の知られざる過去、そしてあの事件の真実。二大探偵夢の共演の物語。
実はシャーロック・ホームズ*1は読んでないんで、ライヘンバッハから始まる空白期間の物語というよりは、カーナッキ*2のオリジンとして楽しんだ。
理系の学生だったカーナッキがオカルトハンターになるきっかけとして、最初が強烈な存在と対峙したから、という理由付けは悪くないし、ホームズのパーソナリティに負けない若々しさも持っている。一緒に過ごした3年間で、のちの嫌な性格になっちゃったのかなぁ（笑）。電気五芒星は、初めからほとんど完成していたのね。
ただ、一番面白かったのは、第二部のモリアーティ教授の過去。
正直言って、彼の妻が創り上げた未来予測方程式を用いて暗黒街を自由に操ってしまう、裏のホームズ的な物語で一冊読みたかったかも。19世紀末イギリスのもう一人のアイコンキャラ、切り裂きジャックとの戦いもよかったし。
その顛末が、ホームズとカーナッキの接着剤にはなっている。以前、キム・ニューマンのインタビュー*3で、ホームズが切り裂きジャック事件を解決できないのはおかしいと語っていて、そういう意味では、この絡みはうまく逃げたかな。ちょっと浮いてるけどね。
サイレンスという名前を使うなら、ジョン・サイレンス*4も被せて欲しかったなぁ、というのは贅沢？
