THE THOUSAND AUTUMNS OF JACOB DE ZOET

出島の千の秋 上

出島の千の秋 上

出島の千の秋 下

出島の千の秋 下

『出島の千の秋』デイヴィッド・ミッチェル河出書房新社

寛政11(1799)年5月9日、若き産婆・藍場川織斗は長崎奉行の愛妾・川蝉の息子を難産の末、無事取りあげる。一方、オランダ商館に赴任した事務員ヤコブ・デズートは、商館長の懐刀として活躍しながら、淡い恋心を織斗に抱く。ペリー来航に先立つ1800年代前後の長崎出島を舞台に、オランダ商館長フォルステンボース、博識かつ公正なる医師マリヌス、新時代を夢見る通詞・緒川宇佐衛門、不知火山の比丘尼坊を支配する峡河藩主・榎本僧正のほか、杉田玄白前野良沢など、虚実ないまぜののありうべき物語が華麗かつ自在に繰り広げられる。日本にも馴染みの深い著者による、ブッカー賞最終候補の最高傑作、ついに刊行!

『ナンバー9ドリーム』*1クラウド・アトラス*2と読んでるけど、デイヴィッド・ミッチェルはいつもおんなじ感想なんだよなぁ。


物理的に厚いのに、内容がなんか薄味。


過剰なまでのサービス精神で次から次へとエピソードが投入され、一時足りとも飽きさせず、しかもリーダビリティがいいのに、イマイチ読後感が薄いのはなぜだろう……


作者は日本で長く生活していたこともあってか、日本を舞台にしたものが多い。しかも、日本人が読んでも不自然さがない。
今回は長崎の出島が舞台の時代劇だというのに、おかしな部分は感じない。
だけど、そこがネック。
上述した、読み口が薄味と言うこととあいまって、不自然さのない時代劇は、上下巻という長編にもかかわらず、どうにも満足度がない。
ガイブンとしてこれを読む意味があるのかなぁ、と自問自答。
きちっと書いた作者には本当に申し訳ないけど、海外作家が書いた日本像には奇天烈な部分を求めちゃうんだよね。この陥穽(?)をついたのが〈ニンジャスレイヤー〉*3だったり、『スターシップと俳句』*4だったりするわけ。
虚実ないまぜの歴史ものなら、山風読めばいいしな〜。


期待した不知火山も割合的には短く、終盤のイギリスがやってきて以降は結構面白かったかなぁ。特にエピローグ的ラストの超越感はなかなか。


でも、やはり薄味……