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神話の遺伝子 (マグノリアブックス)

神話の遺伝子 (マグノリアブックス)

『神話の遺伝子』ジェレミー・ロビンスン〈マグノリアブックスMB-05〉

“チェス・チーム”―それは、高度な訓練を積んだ隊員たちによる特殊部隊だ。チームリーダーのキングは、考古学者の友人ジョージに呼ばれてペルーのナスカに向かう。九つの頭を持つ巨大な生き物の地上絵が新たに見つかり、その地下には遺物が眠っているらしい。遺跡荒らしから守ってもらうために、ジョージはキングを呼んだのだ。戦闘のない簡単な仕事だとキングは思っていた。しかし、高性能な防護服に身を包んだ一群が現れてそこは殺戮の現場と化し、ジョージは連れ去られてしまう。自分には助けが必要だ。キングは仲間たちに召集をかけ―。

『怪物島―ヘル・アイランド―』*1の解説で紹介されている未訳作品が同時期に発売。


どうやら、特殊部隊が怪獣と銃火器で戦う話が好きみたい(今さら)


結論から言っちゃうと、『怪物島』より面白い。
ジェイムズ・バイロン・ハギンズ作品好きな人は、これも気にいるんじゃないかなぁ(って、『極北のハンター』未読なんですが)
ジェレミー・ロビンスンの作品はリンクしてるらしいけど、『神話の遺伝子』と『怪物島』にはそれはないのかな? 『怪物島』終盤に出てきた軍隊は関係ないよな?


物語の進行とともに、どんどん過剰になっていくエクストリーム感は健在なんだけど、、今回、主人公チームもそれなりに濃いキャラクター造型になっているので、『怪物島』での「モンスター書きたいから人間書く暇ないよ!」というボヤキは聞こえてこない。
〈チェス・チーム〉もっと掘り下げて欲しいけど、それは続刊に期待かな? 司令官のディープ・ブルーがまたお約束な造型で判ってらっしゃるw


南米で発見される古代ギリシアの遺跡、神話時代から存在する秘密結社、実在したヒドラヘラクレスの正体、とトンデモ設定が目白押しなんだけど、それぞれが補完しあっているので、物語と遊離しておらず、意外なほどそこに違和感を覚えない。


ジェレミー・ロビンスンの作品はまだ『怪物島』しか読んでないんで、それとの比較ばかりになっちゃうけど、向こうの推進力が「生還したい」というキャラクターの行動原理と「怪獣がもっと見たい」という読者(作者)の欲求の2方向だったのに対して、こちらは、主人公たちは敵を殲滅するために自ら怪獣のもとに向かっていくため、ストーリーは整理されていて、リーダビリティは抜群。むしろ、アクションゲームのようにステージが変わっていく展開に難を感じたかな。


作者は同年代で、『アルゴ探検隊の冒険』*2タイタンの戦い*3って、お前は俺か!?
というわけで、怪獣もハリーハウゼン・モーションに脳内変換w


ちょっと気になったのが、こういう話だからなのか、それとも実はそんなにメジャーではないのか、けっこうギリシア神話の解説セリフが出てくるんだよね。ギリシア神話はオタクの一般教養だと思ってたんだけど、そう思ってるの俺だけ?


マグノリアブックスは今までロマンスしか出てないと思ってスルーしてたんだけど、もしかしたらこういうエンタメ系も結構出てるの?