The Resurrectionist: The Lost Work of Dr. Spencer Black
- 作者: エリックハズペス,Eric Hudspeth,松尾恭子
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2014/05/26
- メディア: 単行本
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19世紀末、スフィンクス、ケンタウロスにハルピュイアなど伝説の奇獣の解剖図を『絶滅動物図録』として記し消息を絶ったスペンサー・ブラック博士。その数奇な人生をたどり、代表作『絶滅動物図録』を付したゴシック風味に満ちた奇書。
架空博物誌好きが素通りできない本がまた出ましたよ。
『秘密の動物誌』*1的な本を予想してたんだけど、ちょっと違う。他の架空博物誌がある種の現実が創りだされているのなら、これはマジック・リアリズムと言えるかも。
しかも、マッドサイエンティストもので、カーニヴァルもので、狂えるホラーでもある。
奇形を研究していたスペンサー・ブラック博士。彼は奇形は神話や伝説の種族の末裔だと考え、同じような姿にすれば隠れていた機能が発現すると考えていた。彼は手術で生物を合成させ、ついには神話の生き物は実在したはずとその証拠を探し始める……
内容の半分以上が、ケンタウロスやハーピー、ケルベロスなど幻獣の詳細な解剖図に費やされている。
これは実在した証なのか、博士の妄想なのか、合成生物製作の設計図なのか……
日記形式なので、いわゆる信用出来ない語り手として読め、どこまで本当で、何を隠しているのか判別できない。
しかし、ラストのグロテスクな出来事は博士の慟哭に思える。
前半の日記部分、後半の解剖図と両方とも面白いんだけど、惜しむらくは図版に古びがないんだよなぁ。フェイクとしてのリアリティが欲しかった。
ここにもう一工夫あれば、もっと良かったのに。