The Resurrectionist: The Lost Work of Dr. Spencer Black

異形再生: 付『絶滅動物図録』

異形再生: 付『絶滅動物図録』

19世紀末、スフィンクスケンタウロスにハルピュイアなど伝説の奇獣の解剖図を『絶滅動物図録』として記し消息を絶ったスペンサー・ブラック博士。その数奇な人生をたどり、代表作『絶滅動物図録』を付したゴシック風味に満ちた奇書。

架空博物誌好きが素通りできない本がまた出ましたよ。


『秘密の動物誌』*1的な本を予想してたんだけど、ちょっと違う。他の架空博物誌がある種の現実が創りだされているのなら、これはマジック・リアリズムと言えるかも。
しかも、マッドサイエンティストもので、カーニヴァルもので、狂えるホラーでもある。


奇形を研究していたスペンサー・ブラック博士。彼は奇形は神話や伝説の種族の末裔だと考え、同じような姿にすれば隠れていた機能が発現すると考えていた。彼は手術で生物を合成させ、ついには神話の生き物は実在したはずとその証拠を探し始める……


内容の半分以上が、ケンタウロスハーピーケルベロスなど幻獣の詳細な解剖図に費やされている。
これは実在した証なのか、博士の妄想なのか、合成生物製作の設計図なのか……


日記形式なので、いわゆる信用出来ない語り手として読め、どこまで本当で、何を隠しているのか判別できない。
しかし、ラストのグロテスクな出来事は博士の慟哭に思える。


前半の日記部分、後半の解剖図と両方とも面白いんだけど、惜しむらくは図版に古びがないんだよなぁ。フェイクとしてのリアリティが欲しかった。
ここにもう一工夫あれば、もっと良かったのに。