THE GIRL IN THE STEEL CORSET

少女は鋼のコルセットを身に纏う ~スチームパンク・クロニクル~ (竹書房文庫)

少女は鋼のコルセットを身に纏う ~スチームパンク・クロニクル~ (竹書房文庫)

19世紀、大英帝国ロンドン。街には地下鉄や蒸気自動車、人型機械が行き来している。この世界では、ある鉱石の発見で科学が大幅な進歩を遂げていた。ある夜、若きグレイソーン公爵グリフィンは、傷だらけで道路に飛び出してきたメイド服の少女をヴェロサイクルではねてしまう。グリフィンは彼女を屋敷へと連れ帰り、傷の手当をさせるが、フィンリーと名乗る少女には彼の予想を越えた秘密があった。フィンリーにはもうひとりの彼女である“影の人格”が宿っており、表に出てくると超人的な強さを発揮するのだ。それは、エーテルを操るクリフイン自身や、彼の仲間の怪力の少年サム、天才メカニック少女エミリーと同じような、人間の常識を遥かに超えた能力だった……。やがてグリフィンは、美しくも危険な少女フィンリーと大英帝国を揺るがす陰謀に立ち向かうこととなる――。蒸気の煙と歯車の軋りと共に、いま〈スチームパンク・クロニクル〉シリーズの幕が上がる!

スチームパンク・クロニクル〉第1巻。
とりあえず、味見で着手。


ラノベっぽい表紙が描かれているけど、内容もそんな感じ。ちなみに原著カバー*1は雰囲気がぜんぜん違う。


特殊能力を持った若者たちが大英帝国の平和を影で支える、というよくある筋なんだけど、主人公が金も能力も地位もあるので、活動の障害になるものがないため、冒険活劇風な割にはかなり平板。また、設定や説明で紙幅が費やされるのはあまり上手くないと思うけど、その分、キャラクター主導の小説としては、それぞれのキャラが立っていて、それなりに楽しい。
『X-メン』と『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』*2を足したような作品を書きたかったという作者の言葉通り、キャラクターたちは超能力で見分けがつけられようになっている。
だから、全体的に漫画的なビジュアルで脳内変換されるw そのわりには、背景があまりスチームな印象がないのがもったいない。


世界を描き込むタイプの作家ではなく、キャラクターをのびのび動かしたい作家なのかな? フィンリーの素性があっさりわかっちゃうのも、物語よりもキャラ重視のように見える。
だから、スチームパンクによくあるディテールの作り込みよりも、主要キャラたちの印象が強い。
まぁ、若き公爵と暗黒街の顔役との三角関係とか、好物ですがw
何度も書いてるように、キャラ造形はそれぞれ印象が強く、題名にもなってる鋼鉄のコルセットなどビジュアルはいい感じ。メカの天才のエミリーが万能すぎるきらいはあるけど。
ただ、主人公フィンリーの二重人格は統合しないほうが良かったんじゃないかなぁ。制御はできても、性格は変わっちゃう方が、今後色々便利だと思うんだけどなぁ。
多重人格ネタは、日本のほうが上手い気がする。


エピソード自体はこれで解決してるんだけど、クリフハンガー的に次回に続くラストになっている。
途中出てくる殺人事件は今後回収されるんだよね?