今年の読了本2010

今年の読了本を回顧。
生活が激変したため、読了数も激減。100冊はなんとか超えたけど……


今年のSFは、かなり豊作。
まずは、なんといっても『異星人の郷』*1。身震いするほどのSF的高揚感は久々。必読。
続けて、ファージング三部作」*2。今後、改変歴史の新たな傑作として語られていくはず。
昨年の『PSS』に続いて、待望の短篇集『ジェイクをさがして』*3も今年。SFというより異色短篇集的な味わいが強けど、やはり素晴らしい。
ペレーヴィン『宇宙飛行士オモン・ラー』*4も変な話で外せない。
それから、アンソロジーの年だったという印象も強い。SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー『ワイオミング生まれの宇宙飛行士』*5『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』*6『スティーヴ・フィーヴァー』*7は全て良かったし、『きょうも上天気―SF短編傑作選―』*8もスタンダードな名作ぞろい。
「老人と宇宙」シリーズも『ゾーイの物語』*9で完結。
『創世の島』*10『ハンターズ・ラン』*11も記憶に残ってる。
『時の地図』*12も奇妙な小説だったなぁ。
個人的には『キリストのクローン―新生―』*13も面白かったんだけど、どうですか?
『未来医師』*14で多くの方からお叱りを受けたのも思い出深い(笑)


SFに比べるとファンタジーは少なめ。
ここでもミエヴィルの存在感は強く、『アンランダン』*15は楽しめた。
『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』*16はゲイマンの作品では『ネヴァーウェア』ぶりに面白かったなぁ。
ヴァルデマール年代記は訳者が増えて刊行スピードもアップ。その中で新三部作の『太陽神の司祭』*17はシリーズで1番面白いかも。


ミステリはほとんど手付かず。
でも、『卵をめぐる祖父の戦争』*18はマスト。物語好きなら必読レベル。
並んで『機械探偵クリク・ロボット』*19も超ラブリー。楽しいの一言。
カーデュラものをまとめた『カーデュラ探偵社』*20は、リッチーはまとめて読むと面白くないという蒙を啓いてくれました。
「現代短篇の名手たち」はもう出ないのかなぁ。『ババ・ホ・テップ』以外地味だけど。


ホラーは、WORLD WAR Z*21高慢と偏見とゾンビ*22というゾンビ二大作の年に尽きる。
前者はゾンビ小説のベストと言って過言ではない。オーラルヒストリーという、ありそうでなかったゾンビもので、映像をはるかに超えた広がりを見事に表現。
後者は訳された事自体がニュース(笑)。高慢と偏見*23を読む機会を作ってくれたことでも感謝。
『黄衣の王』*24は古いという感想しかないんだけど、表題作だけでも読む価値アリ。
運命のボタン*25『ヒー・イズ・レジェンド』*26『アースバウンド-地縛霊-』*27とマシスン関連も賑やかだった1年。


奇想コレクションは、
『跳躍者の時空』*28『平ら山を越えて』*29の2冊。両方共オススメ。
また新創刊されたストレンジ・フィクション第1弾エステルハージ博士の事件簿』*30も楽しかった。
未来の文学、プラチナファンタジーは出なかったんだっけ?


金鉱の独り占めを図るべく、去年から掘り始めたパラノーマル・ロマンス。
落盤こそ起こしてないけど、出てこないなぁ……(笑)
そんな中で、ナリーニ・シン*31は格別に面白い。設定なら、SFやファンタジージャンルと並べても遜色ない。
(株)魔法製作所シリーズは『スーパーヒーローの秘密』*32でクライマックスを迎えた。
ちなみに、1番面白かったロマンスは『高慢と偏見』(笑)
そろそろSFMはパラロマ特集やってもバチ当たらないと思うんですけど。


その他海外文学は、
『煙滅』*33から始まった1年。よく訳したよなぁ。
待望の『変愛小説集II』*34も今年。ヴクサヴィッチの短編集はまだかね?
新潮クレストの『初夜』*35いちばんここに似合う人*36はぜんぜんタイプが違う小説だけど、両方とも楽しませていただきました。
EX LIBRISが、誰が、こんなにコンスタントに出ると思っていただろうか? 大作『野生の探偵たち』*37はシリーズ中ベストの一冊。『ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン』*38に出てくる「私はアル中じゃない。ボルドーが好きなだけだ」は積極的に応用したい名台詞(笑)
『隔離小屋』*39『螺旋』*40もよかったな。
『わたしは英国王に給仕した』*41チェコの思い出でかさ増しされてるのもあるんだけど、フラバルは読んでいきたい作家。
なぜか、ハルムスラッシュ*42が訪れた年でもあった。
ずっと読みたかった『犬の心臓』*43も着手。来年はマルガリータ行きたいなぁ。
カッコウが鳴くあの一瞬』*44で残雪初体験。中国とか今までチェックしてこなかったからなぁ。


相変わらず、日本人少なし。
『エデン』*45はもはやミステリではないけど、ツール・ド・フランス小説としては傑作。
『粘膜兄弟』*46はちょっと期待はずれ。


ノンフィクションでは、
『アンティキテラ−古代ギリシアのコンピュータ』*47は面白い。ギリシア旅行前に読んどいてよかった。
以前から好きだったトム・キーティングの『贋作者』*48もやっと読めた。『ギャラリーフェイク』のモデルの一つだと思うんだよね。


今年印象的だったのが、ブルガーコフ作品集』*49『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』*50といった流通が細いけど、見過ごせない作品があったこと。こういうのもっとあるのかなぁ?


アメコミとBDは未曽有のラッシュ!
バブルで終わりそうだけど、根付いてもらいたい。


半分を未読の古本に当てたいという目的はまたもや達成されず。全体の20%以下。
薔薇の名前』『百年の孤独』『ロリータ』はまたまた宿題。


さて、来年は何が出ることやら。

*1:異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)異星人の郷 下 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

*2:英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

*3:ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

*4:宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

*5:ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

*6:ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

*7:スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

*8:きょうも上天気 SF短編傑作選 (角川文庫)

*9:ゾーイの物語 老人と宇宙4 (ハヤカワ文庫SF)

*10:創世の島

*11:ハンターズ・ラン (ハヤカワ文庫SF)

*12:時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

*13:キリストのクローン/新生 上 (創元推理文庫)キリストのクローン/新生 下 (創元推理文庫)

*14:未来医師 (創元SF文庫)

*15:アンランダン 上 ザナと傘飛び男の大冒険アンランダン 下 ディーバとさかさま銃の大逆襲

*16:墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活

*17:太陽神の司祭 上 (ヴァルデマールの嵐1) (創元推理文庫)太陽神の司祭 下 (ヴァルデマールの嵐1) (創元推理文庫)

*18:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

*19:機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

*20:カーデュラ探偵社 (河出文庫)

*21:WORLD WAR Z

*22:高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

*23:高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

*24:黄衣の王 (創元推理文庫)

*25:運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)

*26:ヒー・イズ・レジェンド (小学館文庫)

*27:アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

*28:跳躍者の時空 (奇想コレクション)

*29:平ら山を越えて (奇想コレクション)

*30:エステルハージ博士の事件簿 (ストレンジフィクション)

*31:青の瞳をもつ天使 (イソラ文庫)冷たい瞳が燃えるとき (扶桑社ロマンス シ 27-2 〈サイ=チェンジング〉シリーズ)氷の戦士と美しき狼 (扶桑社ロマンス)

*32:スーパーヒーローの秘密 ((株)魔法製作所) (創元推理文庫)

*33:煙滅 (フィクションの楽しみ)

*34:変愛小説集2

*35:初夜 (新潮クレスト・ブックス)

*36:いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

*37:野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)野生の探偵たち〈下〉 (エクス・リブリス)

*38:ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)

*39:隔離小屋

*40:螺旋

*41:わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

*42:ハルムスの世界ズディグル アプルル―ハルムス100話シャルダムサーカス

*43:犬の心臓 (1982年) (河出海外小説選〈36〉)

*44:カッコウが鳴くあの一瞬

*45:エデン

*46:粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

*47:アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ

*48:贋作者 (1979年)

*49:ブルガーコフ作品集

*50:ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)