2010年3月号

S-Fマガジン 2010年 03月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 03月号 [雑誌]

今月は、『2009年度・英米SF受賞作特集』


翻訳は4本
・「アードマン連結体」……ナンシー・クレス
ヒュゴー賞ノヴェラ部門
養老院で暮らすアードマン博士は、今も教鞭を執る物理学者。
ある日、体に衝撃が走るのを感じ、さらに別人の記憶も実体験する。
しかも他の入所者にも起こっていた。
それは、徐々に現実にも影響を及ぼし始めていた……
幼年期の終わり*1もの。おじいちゃんだけど(笑)
クレスの作品はディスコミュニケーションがテーマになっていることが多いけど、この作品も同様。
夫婦、年齢、職業と様々な関係の齟齬が小さく積み上げられ、最終的にはそのすべてが無意味となる究極のコミュニケーションが待っているが、そうなった時、これまでとは完全なディスコミュニケーションとなる。
これまでで、一番読みやすくて、面白かったかな。


・「マン・イン・ザ・ミラー」……ジェフリー・A・ランディス
アナログ誌読者賞ノヴェレット部門
採鉱にやってきた惑星上に、異星人が作ったと思われる巨大な凹面鏡を発見。
一人でそれを見に行った男が滑り落ちてしまう。
摩擦がゼロに近く、這い出ることは不可能。
道具はなく、無線も届かず、生命維持装置も長くは保たない。
脱出する方法は?
「日の下を歩いて」*2タイプの、宇宙サバイバルもの。
数少ない持ち物の中から、知恵を絞って脱出する話は、シンプルなんだけど、やはりワクワクするね。


・「26モンキーズ、そして時の裂け目」……キジ・ジョンスン
世界幻想文学大賞短篇部門
1ドルで、26匹の猿とショー一式を譲り受けた女性。
サルたちは、バスタブの中に飛び込んでそのまま消えるという芸を見せていたが、どこに行っているのかわからない。
風変わりであろうとも、家族、居場所、帰る場所は温かい。
キジ・ジョンスンの描く動物はかわいいなぁ。
ラストのお猿の仕草が目に浮かぶ。


・「光線銃――ある愛の物語」……ジェイムズ・アラン・ガードナー
シオドア・スタージョン
森に落ちてきた光線銃を拾った少年。
彼はヒーローとなるべく、体を鍛え、勉強するようになる。
しかし、恋人が出来て、訓練もおろそかに。
彼女に秘密を明かそうか、お気に入りの場所に連れてきたが……
青春レーザーブラスト!
女性への不信、意固地な自分ルール、陰謀論気味な想像……童貞気質のオタク男子はいろんな意味で悶えますよ。
光線銃がある限り、結婚も子供も持てない、という悟りは、オタクなら誰もが脳内に常駐させてるでしょう。
早くも今年のベスト入り確定。
ガードナーの「人間の血液に蠢く蛇 その実在に関する3つの聴聞会」*3は凄い好きなんだけど、全然訳されないなぁ。
スタートが『プラネットハザード』*4だったのが失敗?


SF SCANNER特別版は、
"Emissaries from the Dead"アダム=トロイ・カストロ
"The Shadow Year"ジェフリ・フォード
が出て欲しいなぁ。
と言うか、この二人はもっと訳されて欲しい……


SFマガジン・表紙ギャラリー」は70〜72年。


大森望の新SF観光局」お休み


堺三保アメリカン・ゴシップ」
J・J・エイブラムスの話


「デッド・フューチャーReMix」は、コロニー、宇宙進出の落とし子、ガンダム


「SF挿絵画家の系譜」は、A・ソコロフ


「サはサイエンスのサ」は、単行本発売記念で、カラー!


「サイバーカルチャートレンド」は、クラウド・コンピューティング


「センス・オブ・リアリティ」は、
金子隆一は、なぜ、生物は自ら上がったのか?
香山リカは、堕落教の教祖(笑)


「MAGAZINE REVIEW」は〈アナログ〉誌
"Global Warming"ハリイ・タートルダヴ
"Evergreen"シェイン・タートロット
"In the Autumn of the Empire"ジェリイ・オルション
が面白そうだった。


テッド・チャン・インタビュー、オールタイム・SF映画ベスト座談会もあり。


来月は「ベストSF2009」上位作家特集。