THE LAST UNICORN & TWO HEARTS

完全版 最後のユニコーン

完全版 最後のユニコーン

『完全版 最後のユニコーン』ピーター・S・ビーグル〈学研〉
新訳&続編「ふたつの心臓」収録。

森でひっそり暮らすユニコーン。ある日、この世にもうユニコーンは残っていないという話を耳にする。蝶が残した〈赤い牡牛〉という謎の言葉を手がかりに、
ユニコーンは仲間を探すための旅に出る。途中、魔法が下手な魔法使いや義賊に憧れる女性も加わり、目的地のハガード王の城を目指す。しかし、城の目前で〈赤い牡牛〉が現れ、ユニコーンは絶体絶命の危機に……

深読み&寓意は真面目なファンタジー者の方に任せて、ざらっと感想。


「モダン・ファンタジイの最高傑作!」と謳われる感動はなかったんだけど、けっこう不思議な手触りを感じることは出来た。
昔話のお約束である「それはまた別のお話」を起点とした物語なのね。それありきで物語は語られると同時に、同じスピードでその後にも広がっていく。
ストーリーそのものはファンタジーなんだけど、手法はポスト・モダン(って言い方ももう古いけど)。キャラクターたちは、メタ視点で自分たちの役割を知っており、感情を持ってお約束どおりに演じたくないと思いながらも、語り手や読み手のためにそれを破ることない。彼らは語り手や読み手がいてこそ、初めて存在できるのだ。傑作ゲーム『MOON』に感触が似てるかも。


「ふたつの心」37年ぶりの続編ということだけど、個人的にはこちらはそんなに必要性を感じないかなぁ。物語の語り手と演じ手、という構成にはなってるけど。


装丁はいいんだけど、あらすじがないんだよなぁ……(あらすじ厨)