BLACK DESTROYER and other stories

『黒い破壊者 宇宙生命SF傑作選』中村融・編〈創元SF文庫715-05〉

深宇宙へ進出した地球人類を待ち受ける、多種多様な宇宙生命。彼らとのコンタクトこそはSFの醍醐味のひとつであり、そこからセンス・オブ・ワンダーが生まれるのだ。そうした作品の中から生物学的な面白さが秀逸な中短編を集成した。本邦初訳作1編、書籍初収録作4編、そして後に『宇宙船ビーグル号の冒険』の第1話となる貴重な原型作品を加えた、ヴァラエティに富む全6編。

宇宙生物をテーマに編まれたSFアンソロジー
「宇宙人」ではなく「宇宙生物」というのがポイント。知的生命体かどうかもわからないため、彼らとの接触は、対話ではなく、生物学的アプローチしかない。
架空理論に基づき、その正体を探っていく展開は、ミステリと言えなくもないかも。
なにはともあれ、宇宙生物はワクワクするよねw


「狩人よ、故郷に帰れ」……リチャード・マッケナ
本邦初訳。
イニシエーションとして、巨獣を倒す文化圏の惑星が、少なくなったその獣を別の惑星で増やそうと考える、テラフォーミング的作品。
ラストはセカイ系(?)。ソラリスにも通じるような薄気味悪さを感じてしまった。


「おじいちゃん」……ジェイムズ・H・シュミッツ
シュミッツとか、凄い懐かしいな。
浮島の話はなんか既視感あるんだけど、この短篇は覚えがないんだよなぁ。
『悪鬼の種族』*1ってどんな話だっけ?


「キリエ」……ポール・アンダースン
エネルギー生命体とテレパシーで対話できる女性の物語。
これ、完全にホラーだよね。


「妖精の棲む樹」……ロバート・F・ヤング
ヤング嫌いは公言して憚りませんが、この作品は比較的悪くないかな。
処女厨ヤングだけど、同時に巨女フェチでもあるんだよね。
この作品は後者で、童貞がヤリ手のお姉さんにたぶらかされる話ですw
異星の生態のオチはかなり好き。


「海への贈り物」……ジャック・ヴァンス
ヴァンスの作品は、異星の海なのに、タートルネックの船乗りのヴィジョンがちらつくw
たとえ、塩分のない海だとしても、そこからは潮の香りが漂ってくる。
この作品もそんな一作。


「黒い破壊者」……A・E・ヴァン・ヴォークト
後に『宇宙船ビーグル号』*2に組み込まれる短篇。
大昔に読んだ気もするんだけど、全く覚えてないので新鮮に楽しめましたw
80年近く前のSFとは思えないほど面白い!
凶暴だがそれを隠す怪物、それ怪しむ唯一のクルー、一人ずつ消されていく仲間、正体を表した怪物との知恵比べ、って梗概はさんざん見てるし、その原点とも言えるような作品。
ラストの決着も、理屈で勝つのもいい。
『宇宙船ビーグル号』読もうかなぁ。