BRIGHTNESS FALLS FROM THE AIR

『輝くもの天より墜ち』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア〈ハヤカワSF1623〉読了

妖精のような美しい種族が暮らす辺境の惑星ダミエム。彼らの体液から造られる最高の酒を狙って、以前、惨殺が起きたため、今では連邦の保護下にあった。行政官のコーリーとキップ、医師のバラムが駐在していた。そこに、数十年前の戦争で破壊された〈殺された星〉が迫っていた。オーロラのような光景を見られるのもこれが最後。〈殺された星〉を見物しようと観光客がやってくるが、ソフト・ポルノの撮影隊、植物状態の妹を連れた公爵婦人、妙に大人びた少年、航路を間違えられた水棲人など、訳ありな人々ばかりで……

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)』で言及されている物語、らしいんだけど、全く覚えてない……
図書館のシーンで出てくるのかしら?


ティプトリー・ジュニアの長篇は初めて。いつもの数倍の長さだけに、ネタも数多く盛り込まれている。ミステリタッチで描かれていて、伏線やガジェットもしっかり収拾。前半と後半とでがらっと物語の雰囲気が一変、始まりと終わりでかなり全く味わいが異なる。
でも、かなり普通のSF。異星人の生殖とかはティプトリーっぽいんだけど、特にセンセーショナルなものはない(それを求めるのも違うけど)。個人的には、やはり3つの短篇とかの方がさらに収まりが良かったような気がする……。
ただ、〈殺された星〉が通り過ぎた後の世界の見え方のもの悲しさ、後半のコーリーとティプトリーの姿が重なって見えるのが印象に残っている。