THE CAPTAIN’S BOAR HUNT and other stories

大尉のいのしし狩り (晶文社ミステリ)

大尉のいのしし狩り (晶文社ミステリ)

『大尉のいのしし狩り』デイヴィッド・イーリイ晶文社ミステリ〉読了
日本オリジナル短編集

 収録作品
・「大尉のいのしし狩り」The Captain’s Boar Hunt
・「スターリングと仲間たち」Starling’s Circle
・「裁きの庭」Curt of Judgment
・「グルメ・ハント」The Gourmet Hunt
・「草を憎んだ男」The Weed Killer
・「別荘の灯」The Light in the Cottage
・「いつもお家に」Always Home
・「ぐずぐずしてはいられない」No time to Lose
・「忌避すべき場所」A Place to Avoid
・「最後の生き残り」Last One Out
・「歩を数える」Counting Steps
・「走る男」The Running Man
・「登る男」The Squirrel
・「緑色の男」The Marked Man
・「昔に帰れ」Going Backward

タイムアウト」ほどの衝撃作はなく、全体的に小粒だけど、
それでも十分に面白い短編集。


お気に入りは、
・「裁きの庭」
 骨董屋をだまして、『裁きの庭』という絵を手に入れた男。
 しかし、その絵には呪いがかかっていると言う。
 鑑定士を呼び、その絵を売ろうとするが……
・「グルメ・ハント」
 フランスの至宝とも言える美食家モンギーズ公爵がイタリアで行方不明になった。
 彼を探すべく、12人が旅立つが、一人また一人と脱落していく。
 公爵は一体どこに?
・「いつもお家に」
 人がいるように見せかける防犯装置「いつもお家に」
 テレサはそこに聞こえる人声が、以前の家主の声が録音されたことに気づく。
 毎日その生活を聞くようになり、その録音が終わると……
・「ぐずぐずしてはいられない」
 心臓を患い、先が短い実業家。
 金さえ出せばどんなことでもしてくれる秘密の病院で臓器移植を決意する。
 人目を避けて、そこに行くと……
・「歩を数える」
 一時寝たきりになってしまい、養生している弁護士。
 かなりよくなったのだが、
 ある日、自分が何度も服を着たり水を飲んだりしているような感覚を覚える。
 夢なのか、それとも現実なのか?
・「昔に帰れ」
 古い農家で19世紀の生活をしている7人の職人。
 最初は上手くいっていたのだが、
 ある日、雑誌に紹介され、観光客が来るようになり……


イーリイの作品は、普通の人が主人公で、
基本的に悪人でないのに、不条理な状況に投げ込まれ、
最終的には破滅する、と言うパターンが多い。
個人的に、特に「グルメ・ハント」と「昔に帰れ」がよかった。
前者は、不条理と言うかドタバタで、ラストは人間的に条理な反応。
後者は、誰にも悪意がないのに、苦々しい最後を迎える。