THE CRIME MACHINE and Other Stories

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

『クライム・マシン』ジャック・リッチー〈晶文社〉読了
去年度のこのミスなどで1位に選ばれた短篇集。

 収録作品
・「クライム・マシン」The Crime Machine
・「ルーレット必勝法」Where the Wheel Stops
・「歳はいくつだ」For All the Rude People
・「日当22セント」Twenty-Two Cents a Day
・「殺人哲学者」The Killing Philosopher
・「旅は道づれ」Traveler's Check
・「エミリーがいない」The Absence of Emily
・「切り裂きジャックの末裔」Ripper Moon
・「罪のない町」Lily-White Town
・「記憶テスト」Memory Test
・「こんな日もあるさ」Some Days Are Like That
・「縛り首の木」The Hanging Tree
・「カーデュラ探偵社」The Cardula Detective Agency
・「カーデュラ救助に行く」Cardula to the Rescue
・「カーデュラの逆襲」Cardula's Revenge
・「カーデュラと鍵のかかった部屋」Cardula and the Locked Room
・「デヴローの怪物」The Deveraux Monster

し、しまった〜!
これは、新刊買いすべき本だった!
ここまで、粒ぞろいで、ハズレなしの短篇集は珍しい(個人的には「切り裂きジャックの末裔」だけイマイチ……)
ほとんど20ページくらいの短篇や、それ以下のショートショート
「こんな日もあるさ」と「縛り首の木」は、頭脳明晰なのに、いつも推理と違う結末を迎えてしまう、ヘンリー・ターンバックル部長刑事シリーズ。
カーデュラは、怪力で夜間営業しかしかない探偵シリーズ。
この2シリーズは、なんともとぼけた味わいがいい。


ありがちな展開を予想させつつ、非常に巧みに、まるで違うラストに着地するのが、リッチーの特徴。
なんというか、落語っぽいんだよね。
オチは、背後に悪意が見えているんだけど、思わず笑ってしまう。


みんなよくて、いちいち感想を書くのも面倒なんで、オチで笑ってしまった、特にお気に入りを。
・「日当22セント」
 冤罪で4年間服役した男。
 人権擁護の弁護士団体によって、ようやく釈放された。
 彼は、全く役に立たなかった最初の弁護士と、
 自分を現場で見たと偽証した二人の証人の元へ行こうとする……
 あらすじだけだとつまらなそうだなぁ。
 ラストの2行が最高! 是非読んでもらいたい。
・「殺人哲学者」
 掘っ建て小屋に住む男の元に、ダークスーツの二人組が訪れる。
 財布を落としたかと尋ねると、彼はわざと死体のそばに置いたと答える。
 彼は金がなく、独房で哲学的思索に耽りたいから、その少女を殺したのだという。
 早く逮捕してもらいたいから、財布を落としたのだが……
 これはショートショート。やはりラストで笑える。
・「エミリーがいない」
 いとこのエミリーが姿を消し、彼女はその夫を怪しむ。
 夫は、エミリーは旅行中だと言うが、
 彼女からの電話や手紙、さらにはエミリーの姿さえも目撃され、
 夫は追いつめられ……
 これ以上書けません。この面白さは実際に読まないと笑えないなぁ。傑作。
 MWA賞受賞作。


「クライム・マシン」「歳はいくつだ」「旅は道づれ」「こんな日もあるさ」もよかったなぁ。
とにかくみんな面白い。
他の作品も読みたくなった。
本読みで未読の人は少ないかもしれないけど、オススメ。