ROGUES IN CLOVER

悪党どものお楽しみ (ミステリーの本棚)

悪党どものお楽しみ (ミステリーの本棚)

『悪党どものお楽しみ』パーシヴァル・ワイルド〈国書刊行会ミステリーの本棚〉読了
先日読んだ『探偵術教えます (晶文社ミステリ)』が面白かったので着手。
元ギャンブラー、ビルの活躍を描いた短篇集。
原著では〈クイーンの定員〉中、最稀覯本だとか。

・『シンボル』 The Symbol
 プロのギャンブラーのビル。
 二人組のギャンブラーに負け、6年ぶりに故郷に帰るが、
 ヤクザ者の息子は家に入れないと父親にはねつけられる。
 しかし、ポーカーで勝負して勝てば、家に置いてやると言われ、
 様々なイカサマを仕込もうとするが……
・『カードの出方』 The Run of the Cards
 賭博師稼業から足を洗い、農夫生活に楽しみを見出したビル。
 ある日、車で立ち往生している女性に出会う。
 ミリーの夫トニーはギャンブルが好きで、
 最近勝負している相手に負け続けているという。
 その相手の名を聞いて、ピンと来たビルは、トニーを助けることに。
・『ポーカー・ドッグ』 The Poker Dog
 トニーから妻の従兄弟が、イカサマ賭博師に有り金を巻き上げられたと電報が届く。
 断るものの、ミリーからも頼まれては行かねばならない。
 トニーの話を聞いたビルはなぜか、犬を探しに行く。
 その理由は?
・『赤と黒』 Red and Black
 トニーの所属するクラブの嫌われ者。
 彼はルーレットで負け続け、ビルにインチキを見破らせろとトニーに頼む。
 そこでビルが用意したものは?
・『良心の問題』 A Case of Conscience
 権威あるクラブ。
 そこで尊大であまり裕福でない男が、気のいい老人に不自然なほど勝ち続けていた。
 トニーはイカサマが行われているに違いない、と考えるが、
 クラブとしては疑いだけで由々しき問題。
 イカサマが見つからなければトニーは除名になってしまう。
 そこでまたしてもビルにすがることに。
・『ビギナーズ・ラック』 Beginner's Luck
 トニーのせいで、あちこちから手紙が届くようになってしまったビル。
 ある日、テーブルを囲んでいる男のイカサマを見破ってくれと、手紙が来る。
 捨てようとするが、行きたがるトニー。
 さんざんイカサマを見ているし、ビギナーズ・ラックでトニーにも見破れるだろう、
 と彼を送り出したビル。
 トニーは上手くイカサマを見破れるのか?
・『火の柱』 The Pillar of Fire
 トニーから休暇に誘われたビル。
 海に行き、そこでビーチポーカーをするのだが、ビルは大負けしてしまう。
 カードを隠せない水着姿で、どうやってイカサマをしているのか?
・『アカニレの皮』 Slippery Elm
 チェスクラブから手紙をもらったビル。
 非常に嫌なメンバーがいて、一番弱い男が彼を負かすように、
 イカサマを考えて欲しいという依頼だった。
 興味を覚えて引き受けたものの、ビルはチェスのルールも知らなかった!

誰が殺したの殺されたのというミステリーはほとんど興味がなく、
変なミステリーや知的パズル系の方が好き。それか小咄系。
そんなわけで、これは大満足。


ちょっと間抜けなトニーがいつも巻き込まれ、
ビルに泣きついて、彼がイカサマ師を懲らしめる、のが基本パターン。
相手のイカサマを見破り、その対抗手段を考えて、ビルが勝負する、と小気味良く進む。
書かれたのも昔だし、禁酒法時代の物語なんだけど古さは感じず、本当に面白かった。
それぞれ、オチもいいし。
みんなよかったけど、特にお気に入りは『カードの出方』『良心の問題』『ビギナーズ・ラック』『火の柱』。


今まであまり思わなかったけど、詐欺師ミステリーが好きかも。
何かオススメの短篇があったら教えて下さい。