Ghost Hunt and Other Ghost Stories

ゴースト・ハント (創元推理文庫)

ゴースト・ハント (創元推理文庫)

「ラジオをお聴きの皆さん,ゴースト・ハントの時間がやってまいりました……」幽霊屋敷訪問を実況中のリポーターが遭遇する怪異と凄惨きわまる結末が鬼気迫る表題作はじめ,川辺に建つ古い館を借りた画家親子を襲う“緑のもの”の恐怖を描いた「赤い館」,魔術師アレイスター・クロウリーをモデルにした怪人物をめぐって呪術戦が展開する「“彼の者現れて後去るべし”」など,M・R・ジェイムズ以来の英国怪奇小説の伝統を受け継ぎ,精妙な筆致による恐怖の描出でその頂点をきわめた怪談の名手H・R・ウェイクフィールドの傑作全18篇を収録


 収録作品
・「赤い館」The Red Lodge
・「ポーナル教授の見損じ」Professor Pownall’s Oversight
・「ケルン」The Cairn
・「ゴースト・ハント」Ghost Hunt
・「湿ったシーツ」Damp Sheets
・「?彼の者現れて後去るべし?」“He Cometh and He Passeth By !”
・「?彼の者、詩人なれば……?」”And He Shall Sing…”
・「目隠し遊び」Blind Man's Buff
・「見上げてごらん」”Look Up There!”
・「中心人物」The Central Figure
・「通路」The Alley
・「最初の一束」The First Sheaf
・「暗黒の場所」A Black Solitude
・「死の勝利」 The Triumph of Death
・「悲哀の湖」Woe Water
・「チャレルの谷」The Gorge of the Churels
・「不死鳥」‘Immortal Bird’
・「蜂の死」Death of a Bumble-Bee

まず、簡単に書誌情報。
新訳は6本。収録作品の半分は国書刊行会から出た『赤い館』*1とかぶっている。


半世紀以上前の作品ばかりなのに、古さは感じられない。怪異の正体が不明のままで終わる作品ばかりなんだけど、それが瑕疵になっておらず、より余韻を不気味に残すことに成功している。個人的には、得体の知れないオカルトが、コズミックホラー的になっていないことに好感が持てる(笑)
内容的には幽霊屋敷(土地)ものが多い。人に憑く日本の怪談に比べて、民族学的な差異はなんなのかな、と楽しむこともできる(俺だけ?)
また、女性キャラクターがいるにもかかわらず、その印象が薄いんだよね。はっきりとは書かれていないけど、あとがき読むと、同性愛者だったのかなぁ。それが作品ににじみ出ているのも興味深い。


お気に入りは、
・「赤い館」
田舎の館に越してきた家族。
床に緑色の泥のようなものが落ちているのを見つける。
さらに、家の中には不穏な気配が漂う……
まさにウェイクフィールド的で、巻頭を飾るにふさわしい作品。


・「ポーナル教授の見損じ」
学生時代からのライバル。
学業では常に一歩及ばなかったが、チェスでは買っていた。
しかし、世界大会がかかった試合で負けてしまい、彼を殺すことに。
彼の代わりに試合に出ることになるが、そこに死んだライバルの姿が……
信用出来ない語り手ものなんだけど、そこに起きる怪異は本物、という趣向が面白い。


・「ゴースト・ハント」
幽霊屋敷訪問を実況するラジオ番組。
しかし、そのリポーターの様子が徐々におかしくなっていく。
異常現象の実況、そのラスト、と現在のモキュメンタリーの原型とも言えるような作品。
ラジオ故にその映像はこちらにもまるで見えず、非常に不気味。


・「目隠し遊び」
大きな屋敷を買った男。
そこに入ると、突然扉が閉まってしまう。
中は何も見えない暗闇。
なんとか壁づたいに出ようとするが……
「左の道」*2に似た閉塞感が怖ろしい。


・「最初の一束」
古くからの神を信じる村。
何らかの儀式をやっているようだが、赴任してきた神父は村八分
ある日、一人の少女が行方不明になる。
神父の息子は石柱を探るが……
ウィッカーマン*3を思い起こさせる作品。


・「悲哀の湖」
妻殺しの疑いをかけられた男。
湖畔の屋敷に逃げように越してくる。
しかし、辞めようとしていた執事が、その湖で死んでしまう……


「蜂の死」がどうにもわからない。
印象には残るんだけど。