THE PROFESSOR AND THE MADMAN

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

『博士と狂人』サイモン・ウィンチェスター(早川書房)読了


完成まで70年間もの歳月がかかった、オックスフォード英語大辞典の物語。


マレー博士は、元々はアマチュア言語学者だったのだが、その実績と能力を認められ、編纂主幹となる。
彼はボランティアの読者を募り、彼らに単語とその用例、その単語が出てくる書名とページをカードにして送ってもらい、
それを整理し、辞書を作っていった。
そのボランティア読者の中に、マイナー博士という人物がいた。
彼は稀覯本も含め、無数の本を読み、毎週のように、しかも編纂者がまさに求める単語や用例を送り続けてくれた。
マレー博士は、彼のことを引退して、金と時間のある医者だろうと考えていたが、
住所は汽車で1時間ほどの所なのに、一度も姿を見せない。
どうやら体があまり丈夫でなく、村から出られないらしい。
それでも、20年をかけ、6巻までできたとき、マレー博士は、どうしても直に会ってお礼を言いたく、
マイナー博士に手紙を書くと、訪問を快く許可してくれた。
汽車を降りるとそこには馬車が待っており、向かった先はいかめしい感じの大きな屋敷。
応接間に通されると、そこにはイメージ通りの老紳士が。
「私はマレーと申します。初めまして、マイナー博士」
しかし、彼はこう答える。
「いえ、私はマイナー博士ではありません。彼はここに20年以上も入院している精神病患者なのです」


おお〜っ! このプロローグだけで、丼飯10杯はいけますな!


ここから二人の人生が語られていく。
どうしてマイナー博士は、精神病院に入院することになり、辞書の編纂に関わるようになったのか?
そして、マレー博士と出会い、どうなっていくのか?
言い古された言葉だけど、まさに事実は小説より奇なり。
本当にドラマチックな物語。
果ての見えない英単語をリスト化していく様は、リスターとしては失禁もの。


この手のドキュメンタリーが好きな人には、是非オススメ!