天来の美酒/消えちゃった
- 作者: アルフレッド・エドガーコッパード,Alfred Edgar Coppard,南條竹則
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/12/08
- メディア: 文庫
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コッパードをまとめて読むのは初めて。
収録作品
最近の異色短編が生々しい湿度があるのに対して、コッパードはからっとしてる。
一節を引っこ抜いたかのような展開に、一気に足下を引っ張られるような結末。そこには、民話的な大らかさがあるんだけど、同時に当事者にとっては何が起きているのかわからない、という薄気味悪さも併せ持っている。
お気に入りは、
・「消えちゃった」
車で旅行中の三人。
なぜか、車のメーターが異様なことに。
町に到着し、一人が新聞を買いに行ったまま戻らない。
次いでもう一人も……
この作品が一番、現代っぽい。
SFでも、怪奇でもなく、不思議でゾッとする話。
『世にも奇妙な物語』とかでありそう。
・「天来の美酒」
屋敷を継いだ男。
ある日、見知らぬ美女が屋敷を譲って欲しいといってきた。
彼女に一目惚れした男は食事に誘い、酒を出すが……
一見、ミステリ風なんだけど、ストーリーは続いているのに、起承転結で主題がバラバラという酔ったような作品。
いくらでも解釈でき、しかし、その解釈は全てが無意味。
・「マーティンじいさん」
墓場で最後に埋められた者は、先に埋められた者の召使いになるという。
嫌われ者が亡くなり、彼が死者からこき使われていると喜んでいたが、
今度はマーティンじいさんの愛する姪が亡くなってしまった。
すると、彼女が嫌われ者にいじめられてしまうではないか。
しかも、墓場は満杯で、もう埋められないという。
どうすれば……
民話っぽい短篇。
じいさんの友達の猟犬番がいい味出してる。
・「おそろしい料理人」
腕はいいが、主人以外には気を許さない女料理人。
夫人さえも罵倒し、ついにはクビを言い渡されてしまう。
しかし、彼女は出ていきたくないと逆らうが……
「天来の美酒」と同じく、冒頭、中盤、結末の出来事から、予想される展開に一切ならない。
ラストの置いてけぼり感は何とも言えない。
一番衝撃的だったのは、巻末の「ジプシー」とか「後家」使用のお断り。ええ〜! フィクションでしょっちゅう目にするけど、お叱り受けちゃう単語だったの!?