ナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲

ナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲

ナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲

2013年に休刊した『ナイトランド』の後継誌として誕生した『ナイトランド・クォータリー』


去年の11月に準備号*1が発売されたものの、内容的には薄く、甚だ不満な一冊。
「本誌は以前と同レベルになる」とは言われてもなぁ、と思いながら半年後。


キム・ニューマ〜ン!


これだけで買いでしょw


言質どおり、翻訳短篇の収録数は、もしかしたら『ナイトランド』時代以上か?
その分、コラムなどのコーナーはカット。これも聞いてはいたんだけど、個人的には読み物も楽しみにしていたので残念。
でも、まぁ、満足な一冊ですよ。


翻訳短篇は8本
「吸血鬼変奏曲」の名のとおり、古典、古典を下敷きにした短篇、21世紀型のヴァンパイア、とバラエティに富んだラインナップ。


「血の約束―ドラキュラ紀元1944」……キム・ニューマン
今号の目玉で、隠し球と言って差し支えないでしょう。
ドラキュラ紀元〉シリーズ4巻はオムニバスで、その序章の翻訳。
だから、ショートショート並に短いんだけど、そんな中でも、ドラキュラが〈城塞〉に降り立っちゃうわけですよ!
これは全訳期待だよなぁ。


「家族の肖像」……スティーヴ・ラスニック・テム
吸血鬼一家(?)の、弱っていく妻と娘を養う父の話。
テムも久々だなぁ。
メタファーにも読めるような、個人的にはなんか生理的嫌悪感を感じてしまった一篇。


「塔の中の部屋」……E・F・ベンスン
悪夢で見続けて塔に泊まることになってしまった青年。
そこには、不気味な絵が飾ってあり……


「復讐の赤い斧」……エドワード・M・アーダラック
白人に一族を殺されたインディアンの少年。
しかし、その白人たちは人間ではなかった……
『ブラスナックル』*2を思い出しちゃった。
これは長篇で読みたいなぁ。


「ホイットビー漂着船事件」……レイフ・マグレガー
療養中の元刑事。
彼は、謎の船舶事故を調査することになるが……
『ドラキュラ』の前日譚。
合理的主義者が、超常存在を認めざるをえない展開は好きだけど、短篇だとちょっと性急な印象。


「太陽なんかクソくらえ」……ルーシー・A・スナイダー
とある昼下がり。
獲物を物色中のサキュバスの前に、異様な姿になった知り合いの吸血鬼が……


「長い冬の来訪者」……ウィリアム・ミークル
様々な理由から荒廃した地球。
厳冬に苦しむ街に、奇妙な男が、物資を満載にしたピックアップトラックでやって来た……
人間が激減した世界で、吸血鬼もまた食事に困る。
そこで生まれる新秩序。


「エイミーとジーナ」……セシル・カステルッチ
体が弱い少女と出会った、吸血鬼の少女。
二人は親友になるが……
21世紀らしい吸血鬼造型。
この作者は、アウトサイダー、マイノリティへの愛ある視線を送った作品が多いみたいだけど、その作風は、ヴァンパイアものと食い合せがいい。
本作も、ひじょうに優しい物語。


翻訳文芸誌としては、以前と同レベルの質でした。
今後も頑張ってほしいなぁ。


〈ナイトランド〉叢書のラインナップが紹介されてるけど、今度は大丈夫なの?
単行本じゃなくて、文庫にすればいいのに。