ANNO DORACULA 1918 : THE BLOOD RED BARON
《ドラキュラ紀元一九一八》 鮮血の撃墜王 (ナイトランド叢書EX-2)
- 作者: キム・ニューマン,鍛治靖子
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『《ドラキュラ紀元一九一八》鮮血の撃墜王』キム・ニューマン〈アトリエサード〉読了
イギリスを逃れ、ドイツ軍最高司令官となったドラキュラ。その策謀を暴くため若き英諜報部員は空から敵地に迫る。迎え討つはレッド・バロンこと、撃墜王フォン・リヒトホーフェン男爵! 一方、エドガー・ポオも撃墜王の拠点、マランボワ城を訪れる。祖国アメリカを捨てた彼は、なぜ独軍要人に呼び出されたのか。そして、空の戦士たちが集う城で起きていることは――?
『ドラキュラ紀元一八八八』に続いて、『ドラキュラ戦記』も20年ぶりの復刊!
リヒトホーフェンとベラ・ルゴシが出てくること以外、まるで内容忘れてたんで早速着手。
「戦争ガー」と賛美するわけでもないんだけど、一次大戦期のエースパイロットたちにはロマンティシズムを感じちゃう。それを更に昇華させ、吸血鬼の撃墜王レッドバロンを作り出しちゃうのが今作。
ドイツ空軍の秘密がマクガフィンなんだけど、実際に、撃墜王たちの戦闘力は大勢にはさほど意味を持たない。それでも彼らの存在にロマンを求めてしまうことを、登場人物、ひいては当時の人々と共有してしまう。出撃シーンは滾りますよ。
それを強化するのが、主人公の一人、永遠のロマンティスト、エドガー・アラン・ポオ。彼がリヒトホーフェンの伝記を書くのがドイツパート。
一方のイギリス側は、ボウルガードとジュヌビエーブに変わって、新しい諜報員ウィンスロップと、ヴァンパイアジャーナリストのケイトが主人公。ドイツがマランボワ城から舞台が動かないのに対して、ウィンスロップとケイトはあちこち移動し、冒険を繰り広げる。また、婚約者のいる人間の男と永遠の少女という妖しい関係は健在。
吸血シーンは淫靡で、そもそもヴァンパイアによる吸血行為はセックスのメタファーということをちゃんと酌んで描かれている。
ドイツとイギリスの両陣営が交互に語られ、ストーリー自体は複雑なものではないんだけど、読了まで時間がかかる原因が、数行読むごとに、巻末の人名事典をめくる、この動作(また)
一次大戦当時の実在の人物、フィクションのキャラクター、古今東西のヴァンパイに加え、エリオット・スペンサー(『ヘル・レイザー』のピンヘッドになる前の人物)うやら、ラングストーム博士(『バットマン』のヴィラン、マンバット)やら、偏執的なまでに無数のキャラクターが登場し、それが《ドラキュラ紀元》ワールドを彩り、魅力的なものにしている。
非実体化して戦車を倒すエルダーは旧版から気になってたんだけど、著者による付記でも触れられていなくて、元ネタないのかな?
マイクロソフトの弟が登場するんだけど、「あれ? 実際に出てきたっけ?」と思ったら、旧版のあとに出たタイタンブックス版の追加シーンでした。
『シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ ~未公表事件カタログ~』でキム・ニューマンは『ドラキュラ紀元』にホームズを出さなかった理由を「ホームズなら切り裂きジャックの正体にすぐに気づくはずだから」と語っているんだけど、さらにそれに対するフォローがこの追加シーンで描かれているのが嬉しい。
上記の追加シーン以外にもおまけはたくさんある中、最大の目玉は書下ろし中編「ヴァンパイア・ロマンス ドラキュラ紀元一九二三」だろうなぁ。
まさか、ジュネたんに勝るとも劣らない萌ヴァンパイアが登場するとは! 1000年以上生きている日本人ヴァンパイア、マウス。セーラー服に日本刀持っているヴィジュアルイメージは、完全にこれですよ。
1923年のイギリスにセーラー服の日本人少女がいる、というのは物凄く浮いてるけど、いわゆる水兵服かもしれなしいし、そこは文字のマジックw
というか、小夜の「S」だし、『BLOOD+』でマウスって呼ばれてるし、人名事典で触れられていないけど、やっぱ、彼女がモデルだよね?
《一九五九》も楽しみにしてます!