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狙われた女 (扶桑社ミステリー)

狙われた女 (扶桑社ミステリー)

『狙われた女』アンソロジー〈扶桑社ミステリー ケ6-12〉

気だるい平日の午後。職場でいつもと変わらない時間を過ごす女性。だが、そんな彼女たちのもとに、銃を手にした暴漢がいきなり襲ってきた……。この冒頭部分を踏襲して三人の奇才がそれぞれ物語をつくりあげた。若い頃の自分の不遇な経験への憤怒を作品にぶつけるケッチャム、映画級の大アクションを見せるレイモン、そして数々のパロディをストーリーに織り込むリー。アメリカの三大バイオレンス作家がその持ち味を発揮して描き上げたスプラッター・ホラーの傑作アンソロジー、ついに登場!

ジャック・ケッチャムリチャード・レイモンエドワード・リーって、完全にお子様ランチじゃん!


見ず知らずの男から電話を受けるOL。その直後、職場に現れた暴漢が銃で殺戮を始める……という冒頭部だけを縛りにしたアンソロジー


・「シープメドウ・ストーリー」……ジャック・ケッチャム
別れた妻が営むバーに乗り込み、ショットガンで殺戮を繰り広げる……夢を見る、応募作品の下読みをするうだつのあがらない男。
何をやっても上手く行かず、ついに本当に銃を持って、妻がいる公園に向かう……
ケッチャムの作品は定点カメラのようで、無感情に陰惨な様子が映し出されるものが多い。
しかし、この短編は珍しく感情が表されている。それも、ドロドロとかなり強いルサンチマンがw
ケッチャム版『猫背を伸ばして』*1って感じ。


・「狙われた女」……リチャード・レイモン
見知らぬ男から電話を受けたシャロン。その直後、職場に現れた男がショットガンを乱射。
辛くも逃げ延びた彼女だが、ビルの他のフロアには人がいない。
唯一出会ったのは探偵で、彼が何とかしようと言ってくれるが……
エログロ『ダイ・ハード*2なんだけど、本書の中では一番普通にストーカーものなので、ちょっと印象が薄い。というか他二作が変化球すぎw
わからなかったのが、上司が生きてる? っていうのは何だったの?
レイモンの最期はどうしても「浴槽」*3と被っちゃうなぁ。


・「われらが神の年2202年」……エドワード・リー
見知らぬ男から通信を受けたシャロン。その直後、職場に現れた男が高周波銃を乱射。
しかし、冷凍液で反撃し男は死亡。
キリスト教連邦となった欧米が建造したエデッサ号は物資補給が任務だが、なにか極秘任務があるらしい。
さらに殺人者の正体にも……
ケッチャム目当ての人がほとんどだろうけど、本書の目玉はこれ。
このお約束で、まさかの宇宙船SF!
エイリアン3*4エンタープライズかと思いきや、物理的に神を見つける話かと思いきや、実は○○○○○もの、というアクロバット
ラストの一行は思わず笑っちゃった。
エドワード・リーは日本では短篇*5が一本訳されてるだけなんで、もっと紹介が進むといいなぁ。


つくづく、〈HOT BLOOD〉シリーズの続刊望む!!