THE BRIDES OF ABERDAR

領主館の花嫁たち

領主館の花嫁たち

当主の妻を若くして失ったその領主館は、悲しみに沈んでいた。そして、愛らしい双子の姉妹の家庭教師として館に訪れたテティもまた、癒しがたい傷を負う身であった。瓜二つの姉妹に慕われ、生きる希望を取り戻していくテティ。だが、館に頻発する怪異が、テティと双子の姉妹の運命を容赦なく翻弄していく……。ブランドが持てる技巧のすべてをつぎ込んで紡ぎあげた、美麗にして凄絶なゴシック小説。巨匠の最後の長編、遂に登場!

名作、古典のたぐいはほとんど読んできてない、基礎がなってない本読みなんだけど、ミステリはなおさら。その中で、クリスチアナ・ブランドは珍しく一冊読んでんだよね。
さて、本作は、ブランドの最後の長編。


正直言って……地味。
地味なんだけど、手を置くことを許されない。
その丁寧な筆致が、歴史ある呪われた館の重厚さになって、予告された悲惨な未来にキャラクターも読者も縛り付ける。


キャラクターが上手く、慈愛深きテティ、控えめなクリスとわがままなリネスの双子。前半で彼女たちの魅力や美点が描かれ、一転、後半ではその人格が変わってしまう・変わらないことによる悲劇が待ち受けている。
冒頭から悲劇は予告されており、普通、呪いを解く方法や抜け穴などの僅かな希望が示唆されるものだけど、この作品では、一歩一歩確実に破滅へ近づいていく様子を語ることが意地悪なブランドの目的w
なんとかならないかと方法を探るも、運命はどうにもならないという諦観も感じられ、助かった人々にも後悔しか残らない。