REDSHIRTS

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

銀河連邦の新任少尉ダールは、憧れの宇宙艦隊の旗艦イントレピッド号に配属される。未知なる宇宙への冒険の旅のはじまりだ。しかし、彼と新人仲間はすぐに艦で奇妙なことが起きていると気づく。任務でのクルーの死亡率が異常に高いのに、艦長たち上級士官はまるで死なず、緊急時には謎の装置に頼って問題を解決しているのだ。この世界では何が起こっているのか? 自分たちの命がなにものかに操られていると疑い、イントレピッド号の謎を解こうとするダールたちは、やがてとんでもない真実と直面することになる……。アメリカSF界屈指の人気作家による、宇宙冒険ユーモアSF。

『アンドロイドの夢の羊』*1が凄い面白かったし、〈老人と宇宙〉シリーズ*2もコミカルなやりとりが少なくないけど、笑い全開にしてもやっぱ上手いなぁ。


ロマンとロマンスにあふれたユーモアSF!
「ベムがいっぱい」*3とちょっと似てるかな。


このキッチュな表紙、ヤバイよね。


宇宙艦隊の旗艦イントレピッド号に配属された新人たち。
しかし、艦長たち艦橋の上級士官はやたらと遠征に出ては無傷で帰還し、逆にその他のクルーはどうでもいいようなことで次々に死んでいく。
緊急時の難題は謎の機械でスイッチひとつ。
さらに、クルーたちはやたらとドラマチックな話し方をしたと思ったら、突然気が抜けたような調子になるし、行動を強制するような心の声が聞こえてくる。
そこで、新任少尉ダールは気づく。「俺たち『スター・トレック』(のパクリ)のキャラクターなんじゃね?」


トレッキーなら間違いなく楽しめる(もしくは怒る)はず!
個人的には直近の劇場版2作以外は『スター・トレック』は全然見てないんだけど、初代のメンツくらいの知識はいちおうあるレベル。それでも十二分に楽しめる。
逆に、あのぴっちりした制服があまり思い浮かばない人だと、魅力は半減かも。


出来の悪いSF感がバシバシ出ている冒頭のシークエンスで、もうやられる。
ひどい演出をみんなで突っ込みながら、古いC級ドラマの上映会を見てる感じなんだよね。
「メールデータ送れよ!」とか「『任務が終わったら結婚するんだ』出ました!」とか「CM前の静止画面!」とかw
それに合わせて、筆致もなんだかチープなんだよね。


しかし、物語は、概念ではなく、実際に自分たちの行動を制御している超越存在がいる、という展開に。
その実例がオタクネタだからこれまた笑えるんだけど、それが現実なら、気が触れるレベルだよなぁ。
それを解決するための奇策が、後半の読みどころ。
笑えて、感動的でありながら、この作品世界ならではの結末まで、ダレることなく一気読み。
さらに、残された人々のその後がまた、作者の物語への愛があふれていていいんですよ。


チェコフ、愛されてるなぁw