初期アメリカ新聞コミック傑作選1903-1944

[原寸版]初期アメリカ新聞コミック傑作選1903-1944 全4巻+別冊

[原寸版]初期アメリカ新聞コミック傑作選1903-1944 全4巻+別冊

いくら海外コミック好きとはいえ、さすがに二の足を踏む値段。おまけに巨大(1ページが新聞一面の大きさ)。
しかし! 昨年のブックフェアで営業さんに猛プッシュされ(Tシャツもつけるとかw)、現物も手に取って結局予約。
で、今年の5月に届いたんだけど、改めてでかい上に、ギックリ腰になるくらい重い。そんなわけで箱から出すの億劫だったんだけど、8/19の講演会に間に合わせるためにようやく着手。


柴田元幸氏曰く「これらはアメリカ新聞漫画の原点ではない。原点はその後に進化したものが存在してこその原点だが、この作品たちは、マンガの進化系統樹で枝分かれしたまま後継が生まれなかった唯一無二のアート」


『眠りの国のリトル・ニモ』ウィンザー・マッケイ



元祖夢オチ(笑)
新聞マンガ、と聞いてまず思い浮かぶのがこれ。
正直、セットの4作品で知ってるのこれだけだったし、読みたかったのもこれ。
非常にアクロバティックでアーティスックな構図は、やはりこの大きさでこそ堪能できる。特に縦長のコマを多用した回はかなりの迫力。
また、色彩も非常に美しい。


ニモのアニメが出来るまで(?)的な当時の映画。
8分過ぎ辺りから現れる、100年前に描かれた超絶クオリティアニメをとくと見よ!

マッケイは実際非常に描くスピードが早かったらしく、早描きの見世物をやっていたこともあるとか。


『クレイジー・キャット』ジョージ・ヘリマン



アメリカでランキングを付けるなら、トップに来ると言われる作品。
性別不明なクレイジー・キャット、その頭に煉瓦をぶつけること愛するネズミ、ネズミを捕まえようとしている犬のおまわりさんの三角関係(?)
でも、イマイチ面白みがわからず……流し読みしちゃったんで、要再読だなぁ。
例えると、ちょっと『ピーナッツ』に近いかな? もっとシュールか。コマ割りやビジュアル面ではかなりアーティスティックなことをしている。
途中からカラーになるんだけど、個人的にはモノクロも好き。


『ガソリン・アレーのウォルトとスキージクス』フランク・キング



ニモ目当てで買ったんだけど、個人的にはこれが大当たり。
元々は主人公ウォルトと隣人の自動車談義マンガだったらしいけど、1年ほどしてから、家庭向けに、ということで、捨て子のスキージクスとの生活にシフト。
基本日常の話なんだけど、しばしば『ニモ』のように夢や幻想ネタで、ファンタジックなビジュアルになる回も少なくない。
個人的には、一面で町内を表した回がお気に入り。
この作品の特徴は、作品内に時間が流れていること。当時の読者は、スキージクスの成長を楽しく見守ったであろうことが容易に想像できる。
ただ、これが、傑作選という性質上かなりのネックで、どんどん時間が進んでいくものだから、いつの間にやらウォルトおじさんが結婚してたり、弟らしきキャラが存在していたり。
現在も連載中で、いったいどうなってるのかが激しく見たい。100歳超えてるよな!?
ちなみに『昨日のように遠い日』*1リーフレットとして2話付録していました。


『さかさま世界』グスタフ・ヴァービーク



当傑作選中、最もアクロバティックな作品がこれ。
1ページ6コマのマンガなんだけど、6コマ目でページをひっくり返して計12コマのストーリーになるという構成。
見てもらうのが一番わかり易い。



ここでは、5コマ目の魚と島が、8コマで大きな鳥になる。
こんなクレイジーなことを2年近くもやっていたという脅威。書き文字まで回転させている(アンピグラム!?)エピソードもある。
ただ、絵ではかなり驚くものの、話はすこぶる強引。また、やたらと怪獣とかは殺しちゃう。


2巻出るのかなぁ……


絵を楽しむだけだったら、だいぶ安いので、原著をオススメ。

Little Nemo in Slumberland: So Many Splendid Sundays!

Little Nemo in Slumberland: So Many Splendid Sundays!

Krazy Kat Deluxe Oversize

Krazy Kat Deluxe Oversize

Sundays With Walt and Skeezix/Big

Sundays With Walt and Skeezix/Big

Upsidedown World Gustav Verbeek

Upsidedown World Gustav Verbeek