ACTS OF GOD

キリストのクローン/覚醒 上 (創元推理文庫)

キリストのクローン/覚醒 上 (創元推理文庫)

キリストのクローン/覚醒 下 (創元推理文庫)

キリストのクローン/覚醒 下 (創元推理文庫)

クリストファーは世界中の人々の眼前で死からの復活を果たし、自らがイエスの再来であることを証明した。さらに彼は、ユダヤの人々の信仰と文化の礎というべきエルサレムの神殿に踏み入って祭壇を汚し、十戒の石板を破壊した。それらは神を崇めるためのものであり、人間の新たな進化にはそうした信仰は妨げになるというのだ。だがそれを目の当たりにしたユダヤ教徒たちのなかには、彼に疑問を抱く者も少なくなかった。神と聖書に真正面から挑みかかった問題作、第三部。
クリストファーは暦をニューエイジと改め、バビロンに新しい国連本部宅建設する。さらに彼は、自分の特殊な血液をクローン複製しカプセルにして、キリストへの信仰を捨てた人々に配布しはじめた。それを飲めば、若さと健康を手に入れることができるというのだ。しかし……ことここに至って、疑念を呈する者があらわれる。クリストファーは本当にイエスの再来なのだろうか? これまでの展開を覆す、驚天動地の三部作ここに完結編。

三部作もこれにて完結。


これまで、クリストファーが目指す理想世界に反対する頑迷な原理主義者や敵対者たるKDPは、単なる障害物として記号化された存在だったんだけど、最終巻になって、彼らに人格が与えられ、しかも、クリストファーのお題目に比肩する、豊かなアンチテーゼを打ち出す。
これがシリーズで最も激しい「転」であり、彼らの言うとおり、もしやクリストファーは……と今まで盲目的にクリストファーに従ってきた世界観がキャラクター同様に揺らぐのが味わえる。


それと並行して、前作*1で「『オーメン3』*2で見たかったのはこの展開だったんだよ!」という感想を持ったんだけど、今回はそれにも増した大パニックが繰りひろげられる。
白髪三千丈というか、神話レベルの大災害。
純粋にディザスターものとして満足にたる出来なんだけど、実はこの大袈裟とも言える破壊及び、KDPのアンチテーゼは、普通の小説とは違う目的ために仕掛けられている。


ちゃんと聖書を読んでいるような人ならば、この小説は初めから展開もオチも読めていたのかも。
非常にセンセーショナルな描写が続くんだけど、それもまた、ある意味作者の思惑通り。
で、キリスト教をよく知らない読者は、容赦無い世界滅亡に大喜びしていたら、ラストでなんとも居心地悪い気分に。この小説のレゾンデートルが、個人的にはカルチャーショック。
確かに、背表紙は灰色で正しいわ(笑)