THE ANDROID’S DREAM

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

地球−ニドゥ族の貿易交渉の席上で事件がおきた。戦争につながりかねないこの間題の解決のため、ニドゥ族は代償として特別なある「羊」の調達を要求してくる。期限は一週間。凄腕ハッカーの元兵士クリークがこの羊探しを命じられるが、謎の宗教団体に追われ、反ニドゥ勢力の暗殺者に狙われるはめに。そして、ようやく見つけ出した羊の正体とは……。〈老人と宇宙〉シリーズ著者がP・K・ディックに捧げた冒険活劇SF。

〈老人と宇宙〉シリーズ以外の長篇は読んだことないし、しかもこんな題名で、どんなもんかと構えていたけど、結論から言うと、これはエンタメSFとしてオススメできる一冊。


〈老人と宇宙〉同様、銀河連邦の一員となった未来。違うのは、戦争による交流ではなく、外交によって様々な宇宙人と付き合っているという点。
しかし、無論宇宙にも序列はあるし、反異星人の剣呑な団体もいる。
そんな中、ニドゥ族との貿易交渉を破談させるために政治家が採った方法はおなら攻撃。それがどんなものなのかは読んでのお楽しみということで、そのおなら攻撃が延々と続き、そこからは美人の「羊」を守りながらノンストップアクション。
同時に、この世界ならではのポリティカルサスペンス、コンゲームものでもあって、最後まで飽きさせない。また、皮肉とユーモアある筆致で、テンポよく読み進めることが出来る。


出てくるガジェットも、おなら兵器に始まり、印象的なものばかり。個人的にはいくつか出てくる盗聴方法と体重変移による追跡がお気に入り。


スコルジーの作品はキャラ小説とも言えると思うんだけど、ユーモラスな分、キャラクターはそれぞれ立っている。例外的に主人公のクリークはハリウッドアクションヒーロー的で面白みが薄いんだけど、これは物語の牽引役としての配置だと思う。
それを補うかのように、超AI、羊、新興宗教の開祖、宇宙人、と非常に人間臭い。奥さんをディズニーランドに連れて行きたがったカサンギ族は忘れられない。