2011年12月号

S-Fマガジン 2011年 12月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2011年 12月号 [雑誌]

今月の特集は、「Best of 2005-2010」


今まで、こんな特集あったっけ? ○○年度英米受賞作特集とは別に。


翻訳は5本。
・「トロイカ」……アレステア・レナルズ
 突如現れた巨大構造物を調査したロシアの宇宙飛行士。
 彼は、そこで見、体験したことのせいで、帰還後に精神病院に入院していた。
 なんとか逃げ出し、構造物の正体を予見していた元学者の家に向かうが……
 主人公とも言える巨大構造物が、いかにもレナルズっぽい。
 このワクワクする構造物と対照的な、陰鬱な未来が印象に残る。


・「懐かしき主人の声」……ハンヌ・ライアニエミ
 知能を高められた犬と猫。
 彼らは、囚われのご主人様を救うために、作戦を決行する。
 蓄音機を聞く某メーカーの犬ちゃんがモデルというのが、もう卑怯(笑)
 ただ、もはや魔法同様の遠未来技術で、ちょっと違和感。
 そんな世界になってもご主人様を待つ犬ちゃんが可愛いのかな。職人気質の猫もいい。


・「可能性はゼロじゃない」……N・K・ジェミシン
 突如、物事の確率が高まった町。
 そこでは宝くじの当選率も事故の発生率も高まる。
 一人暮らしのアデルは、毎日沢山のお守りを身につけて外出する。
 感想は特にないんだけど、けっこう好き。


・「ハリーの災難」……ジョン・スコルジー
 コロニー防衛軍の技術者ハリーは、コルバ族との外交で、殴りあう羽目に。
 『老人と宇宙』シリーズ*1番外編。
 やはり、このシリーズは楽しいなぁ。もっと未訳はないの?


・「小さき女神」……イアン・マクドナルド
 近未来のネパール。
 生きた女神となった五歳の少女。
 しかし、血を流すと人間として俗世に戻らなければならない。
 大人になった彼女は、神としての過去を恐れられ、結婚も出来ずにいた。
 ある日、インドの神の如き新人類と結婚することになるが……
 「ジンの花嫁」*2姉妹編。
 個人的には「ジンの花嫁」より好きだなぁ。まぁ、よく覚えてないんだけど。
 前半の生き神パートと後半のサイバーパンク的展開、食い合せの悪そうな要素が、アジアの空気に包まれて、なんとも言えない一体感を生み出している。
 その中でこそ、語られる少女の成長譚。


大森望の新SF観光局」は、お休み。


堺三保アメリカン・ゴシップ」は、Kindle


「SF挿絵画家の系譜」は、若菜珪


「サイバーカルチャートレンド」は、電子ブックと自炊


「サはサイエンスのサ」は、軽度発達障害型性格分類その2


「センス・オブ・リアリティ」は、
金子隆一は、光より速い粒子?
香山リカは、ITベンチャー長者。


「乱視読者の小説千一夜」は、フィリップ・カー


「現代SF作家論シリーズ」
第11回は、小谷真理によるマイクル・クライトン論。
今までの中で、ベスト級に面白かった。


「MAGAZINE REVIEW」は〈インターゾーン〉誌
"Sleepes"ジョン・インゴールド
"The Ceiling is Sky"スザンヌパルマ
"Her Scientifiction, Far Future, Medieval Fantasy"ジェイスン・サンフォード
が面白そうだった。


来月の特集は、「小川一水