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封印の獣と偽りの氷姫 (扶桑社ロマンス)

封印の獣と偽りの氷姫 (扶桑社ロマンス)

〈サイ=チェンジリング〉シリーズ第5弾

パラノーマル・ロマンス〈超能力者=動物に変身する種族(サイ=チェンジリング)〉シリーズ第5弾! 豹チェンジリング〈ダークリバー〉の戦士ドリアンは、生まれつき変身できない体ながら、抜群の狙撃技術で群れの信頼を勝ち得ていた。そんな彼に、サイの研究所から脱出してきた美貌の科学者アシャヤとその息子を護衛する任が下る。妹をサイに殺されたドリアンは当初アシャヤに憎しみをぶつけるが、やがて二人は抗い難く惹かれあってゆく……。逃避行の行方とは。そしてアシャヤに迫る影の秘密とは。特別短編も収録!

何らかの欠落がある二人が、お互い補いあっていく、というのがパターンのこのシリーズ。
今回の主人公は、これまでも強い印象を残してきた変身できないチェンジリングのドリアン。その相手は、DNAさえも見える最強の医療系サイのアシャヤ。
ドリアンは異常殺人鬼と化したサイに妹が殺されたためサイを深く恨んでいるが、アシャヤの欠落というのが、闇の分身とも言える、反社会性人格障害の双子の妹という存在。
これまでと違い、今回は4巻*1の直接の続きになっていて、取引のため、ドリアンはすでにアシャヤと出会っている。
相容れないはずの種族が結ばれるための必然性を高めていくのが上手い。


しかし、このシリーズはロマンスよりも、SF的設定で語られていく物語が面白いんだよね。決して、二人の関係が世界の命運に直結するようなセカイ系に陥ることはなく(重要なピースかもしれないけど)、二人の恋愛とは無関係に、世界のシステムを破壊するような陰謀が企まれる。
サイの反体制派。殺人さえも辞さないヒューマンのテロリストたち。サイの支配層ですら一枚岩ではなく、今まで影の薄かったヘンリーが不気味な存在に。こうなると、チェンジリングの活動家も出てきて欲しいけど、作者が猫ちゃんたちを愛しちゃってるから無理かなぁ(笑)


また、構成というか、読者の誘導が巧みで、このキャラクターが気になるな、という描写をしておいて、次の巻は彼(彼女)が主人公になる。今回で言えば、マーシーがやたら出てくると思ったら、やはり6巻は彼女の物語。また、上記したようにヘンリーの存在感も増していきそう。個人的にはデザレイが気になる。


個人的にはたまには悲恋も読みたいんだけど、それはジャンル的に許されないの?


あとがきによると、14巻あたりで一区切りの予定だとか。
まだ、半分にも達していないのか……