DYING OF THE LIGHT

マーティンのデビュー長篇。

あまりに遠大な公転軌道を有するため、あたかも銀河を彷徨っているかに見える辺境惑星ワー口ーンに、ひとりの男が降り立った。ダーク・トラリアンは、かつての恋人グウェン・デルヴァノから送られた〈囁きの宝石〉に呼ばれ、この惑星にやって来たのだった。再会を喜ぶダークだったが、グウェンは思いもよらない事実を彼に告げる。自分はもはや自分だけのものではないのだと……。エキゾチックな異星で展開される冒険SF
ハイ・カヴァラーンの四大連壕のひとつ、ブレイスから追われる身となったダーク・トラリアンは、グウェンとともに、AI制御の巨大都市チャレンジに身を潜めていた。だが、追跡術に長けたブレイスのマンハンターは容易に足取りをたどり、ふたりに迫っていた。果たして、ダークとグウェンはこの危険極まるデス・ゲームを生き抜くことができるのか……。米SF界の巨匠がロマンチシズム溢れる筆致で描いた、伝説の第一長篇

デビュー長篇だけあって、後の萌芽がいろいろ見て取れる。
ただ、前半が延々と〈一千世界〉のショーケースの解説を聞かされているようで、その合間に物語が進む印象。後の作品になれば、その設定好きが長篇にうまく融け込んだり、短篇ならその背後を匂わす感じで処理されるようになるものの、この作品は、ボリュームに比べて、設定描写が多い気がする。無数の異星物を放りこむことによって、エキゾチズムを感じさせるのはマーティンのSFに見られることだけど、ここではエキゾチズムを感じる前に疲れちゃう。


物語は、単純に言えばマンハントもの。主人公のダークは、唯一の異邦人として、読者の代理人も担っている。この狩人たちが、蛮人とサムライを足したような文化形態を持っていて、この設定がまた多い。しかし、読者同様、ダークも彼らの言語も思考もポカーンで、理解度が同じ分、置いてけぼり感はない。
最初は設定過多の影に隠れているものの、実はこれが上手く、独特の用語で話されるため、主人公は自分が馬鹿にされているのか、何を言われているのか全くわからない。しかし、物語が進むに連れ、用語の意味が飲み込めてくるんだよね。それにより、彼らの行動原理が単なる時代遅れの野蛮なもの、と一言で片付けられなくなる。
戦士一族の言葉を理解するとともに、ダークの行動もまた変化していく部分がSF的かも。
完全に行動原理を身につけたラストはなかなかカッコイイ。