SOPHIE
- 作者: ガイバート,Guy Burt,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/11/20
- メディア: 文庫
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『体験のあと』*1以降、音沙汰なかったガイ・バートの新作!
と思ったら、10年前に読売*2から出てたのね。
イギリスの片田舎で暮らす幼い姉弟。ひじょうに高い知性を持ちながら、周りに知られないように振る舞うソフィー。そんな彼女を愛し、全幅の信頼を寄せているマシュー。楽園のような生活が続くが、面倒を見ようとしない母、家に滅多に帰らない父、徐々にきしみ始める。20年後、マシューは姉を拉致し、どうしてこんなことになってしまったのかと問い詰める……
「恐るべき子ども」ものであり、サイコものであり、家を中心とした楽園が闖入者によって崩壊していく様は、『ずっとお城で暮らしてる』*3のようなダークファンタジー的感触。
姉との対話の現在と、一人称の過去の回想を交互に繰り返す構成。
リーダビリティはいいのに、過去に何が起き、現在何が起きているのか、なかなか見えてこない。幸せな子ども時代が描写されつつ、そこには正体不明の緊張感が漂っている。一方で、20年後の現在では、敬愛していたはずの姉を縛り付けている不穏な状況。材料を提示していながら、終盤まで真実が上手く隠されていて、それが見えた時、息を呑むと同時に、秘密を解ききっていない自分に気づく。
信用できない語り手なのか、それとも読み手の方が信用できないのか?
解説にある、二人の誕生日が近い理由とかアンモナイトの意味とか、よくわからん。
これは再読してもいいなぁ。短めだし。
オススメ。