自転車少年記

自転車少年記

自転車少年記

自転車少年記竹内真(新潮社)読了
友人の熱烈なオススメで、えらく久々に日本人の小説を手に取る。

4歳になった昇平。
初めて補助輪を取った自転車にまたがる。
しかし、坂で止まれず、突き当たりの家に飛び込んでしまう。
そこにいたのが草太と奏だった……

いや〜、やられました!
完全なる通勤ライダーだけど、それでも魂が熱くなる。
幼年期の、そして現在の自転車生活が、まざまざと目の前に現れる。
これほど登場人物の行く末が気になって、読むのをやめられなかったのは初めてかも。
というか、草太と奏がどうなるのか気になって気になって。


昇平と草太、奏、そして、中学からの親友となる伸男たちの、4歳から29歳までの、常に自転車と共にある年代記
青春、恋、挫折、進路……、大人になるための坂や距離を踏破していく物語。
大事故や、逆にプロレーサーになるような凄い出来事はなく、
それ故に、いつかどこかの自分をその中に見出してしまうはず。
特に、主人公たちとは同年代なので、
自分が小学生の頃に走っていたサイクリングコースや公園がフラッシュバックしてしまった。
自転車の専門用語や交通問題もさりげなく描かれていて、非常に好感が持てる。


25年間にわたって描かれ、
昇平もラストには最初の地点に一周し、草太と奏もその関係にある種の答を出す。
全てのエピソードが愛おしく、感じるものがあるけれど、
個人的には、「ノブオコーナー」のエピソードが1番かな。
メカと自転車に強く、エロ本マニアで、でも女性はとても苦手。
その26歳になった彼が、昇平と草太に出した手紙の内容は?
伸男、そのジレンマは本当によくわかる、わかるよ!
さらに彼の転職先は涙。


この読後感は言葉では言い表せない。是非体感して欲しい。
自転車好きは必読。
オススメ。


こんな青春送りたかったなぁ。
「リプレイ」しても、同じくオタクになると思うけど(笑)