AT THE END OF THE ROAD

あの夏、エデン・ロードで (新潮文庫)

あの夏、エデン・ロードで (新潮文庫)

のどかな町を、くねくねと貫くエデン・ロード。自転車で快走していた十歳のカイルは車と衝突しそうになる。車は横転、血まみれの若い女が彼に迫る。悪夢のような光景に逃げ出した彼は、だが翌日、愕然とする。現場に何も痕跡がないのだ――。偶然“怪物”を目覚めさせたカイルと妹。人の心を支配する魔の闇に囚われた幼い二人は……。最悪の結末の予感に震える、禁断のダーク・ミステリ。

充分に発達したイヤミスは、ホラーと見分けが付かない。


手触りは『少年時代』*1とかと似てるんだけど、ホラー作家が描くそれとはベクトルが完全に異なっている。ホラーの場合は、恐怖が推進力になっているのに、待っているのは希望であることが多い気がする。私見だけど、それは未来なり、魔物を倒すなり、ポジティブな、自発的な前進だからかもしれない。


一方で、ホラージャンル外の作家が書く「少年時代」ものは、恐怖に支配され、逃げ出せないから前進するしかなく、だからこそ、結末も陰鬱なことになる。最初に頭に浮かぶのは、『隣の家の少女*2かなぁ。


この作品も前進したくないタイプの作品で、ページ数は多くないんだけど、待ち受けているものに対峙したくないため、休み休みの読書。しかも、最悪な未来を予感させる独白が突然挟み込まれることによって、その歩みはますます遅くなる。


初めの方こそ、子供ならではの広大な世界、モンスターのような隣人、迷路と化すトウモロコシ畑、と魔法が煌めいているんだけど、そもそもの事件の発端が主人公のため、早い段階で世界は奈落に傾き始める。
とはいえ、10歳の少年には、その傾きを止めようもなく、「その時」「そこ」にいたから、すべてが狂ってしまったとしか言いようがないのかなぁ。


ワンダーウーマンの使い方としては、近年稀に観る鬼畜っぷりなので、それも踏まえて、嫌な気分になりたい人にオススメ。