TIME OUT

ヨットクラブ (晶文社ミステリ)

ヨットクラブ (晶文社ミステリ)

『ヨット・クラブ』デイヴィッド・イーリイ晶文社)読了。


去年の『このミス』にも選ばれ、
奇想系としてSF者も読むべきという、
晶文社の一連の異色作家シリーズ。
短篇は多く訳されているのに、短篇集は日本初。


けっこう前に出たから古本で探してたんだけど、さっぱり見つからないのと、
少しでも晶文社に頑張ってもらわねば、と新刊で購入。


収録作品
『理想の学校』
『貝殻を集める女』
『ヨットクラブ』
『慈悲の天使』
『面接』
『カウントダウン』
タイムアウト
『隣人たち』
『G.O'D.の栄光』
『大佐の災難』
『夜の客』
『ペルーのドリー・マディソン』
夜の音色』
『日曜の礼拝がすんでから』
『オルガン弾き』


気に入ったのは、
・『理想の学校』
息子を軍隊式教育の全寮制学校に入れることに決めた父親。
その校内を見学し、生徒と話をして、
全く持って素晴らしい学校だ。が……
・『ヨットクラブ』
トップランクの成功者だけが入会できると噂されるヨットクラブ。 
しかし、その実態はまるで不明で、メンバーも不明。
ただ定員に空きができたときだけ、入会できるらしい。
若き成功者ジョン・ゴーフォースは何が何でも入会したいのだが、方法がわからない。
ある日、体を壊してしまう。
回復しても、以前のようなやる気は起きず、他の社員たちに仕事を任せていることに気づく。
そんなとき、ヨットクラブから入会の声がかかる。
やはり、前のように入りたい気分は薄くなっていたのだが…… 
・『隣人たち』
田舎町に夫婦が引っ越してくる。
いい人なのだが、どこかよそよそしい。
小さな町なんだから助け合おうという、隣人たちの手伝いもやんわりと断る。
全くお節介を焼けない町民の不満は徐々に高まり、
子供がいるはずなのに一度もそれを見たことがない事実に、
ついに彼らは二人の家に押し寄せる。
・『タイムアウト
イギリス好きのアメリカ人ガル教授。
彼の夢はイギリスに旅行に行くことなのだが、
行こうとするたびにアクシデントが起きて、いまだにその地を踏んだことがない。
また、旅行のチャンスが訪れたのだが、今度は北極で原子力事故が起き、
全ての国に海外への貿易と旅行が禁じられた。
そして2年。
イギリスに学者の一団が派遣されることになり、ガル教授も見事選ばれる。
ついに夢見たイギリスに訪れたのだが……
『G.O'D.の栄光』
子供の時から、自分が神だと気づいていた男。
しかし、そんなことを口にしては、社会生活が上手くできないこともわかっていた。
でも、神であるはずの自分がこんな生活でいいのだろうか?
ある日、新聞の広告欄に自分が神だと信じている方、と出すと……
・『日曜の礼拝がすんでから』
レッティは犬が飼いたかったが、
産まれたばかりの弟がいるから駄目だと親に言われてしまう。
そこで、弟をいなくしてしまおうとするが……


怖いとか薄気味悪い、じゃなくて、読後になんか嫌な感じを残す作品が多い。
特に、不思議な出来事や奇妙な現象、事件が起きるわけでもなく、
普通の人が普通のことをしているだけのはずなのに、
ちょっと一歩、その普通のことが行き過ぎてしまって……という感じかな。
特に『面接』なんかは、昇進の面接を受けるだけのはずだったのに、
おそらくあの後主人公は破滅への道なんだろうなぁ。


SFものは『カウントダウン』『タイムアウト』辺りかな。
『オルガン弾き』どうなのかな?
タイムアウト』は絶対にあり得ない、と思いたいけど、
もしかしたら、この世界も……と考えると、結構怖いね。
それは、もう誰にも証明できないし。


『日曜の礼拝がすんでから』は嫌な時期に読んじゃったなぁ。
「恐るべき子どもたち」系の話は、今じゃ作り事じゃなくなってるもんな。


今後も異色作家を出して欲しいので、皆々様にも是非。