古地図に魅せられた男

古地図に魅せられた男 (文春文庫)

古地図に魅せられた男 (文春文庫)

『古地図に魅せられた男』マイルズ・ハーベイ(文春文庫)読了。
なんか、最近こんなのばっか読んでんな。


今回読んだこれは、ミステリーではなくて、
アメリカ犯罪史上最大規模の古地図泥棒を追ったドキュメンタリー。
と言っても、ずーっと追ってるわけではなく、それを軸にして、
古地図ディーラー、コレクター、図書館員、地図の歴史、地図の作り方など、古地図に関する読み物と言った感じ。


最大規模といってるように、向こうでは古地図ってのは、フェアが開かれるくらい市場があるもののようだ。
古地図は嫌いじゃないけど、集めたいとは思わないなー。
でも、向こうじゃ研究家でなくても、実業家がちょっと応接室に飾りたいとかそういうのがあるみたい。
それとも、日本でも盛んだけど、俺が知らないだけか?


さて、この泥棒の手口はと言うと、偽名で図書館に入り、剃刀でページを切り離してしまうと言う、なんとも本好きにとってはぞっとするような手口。
けれども、この本をばらすと言うのは別に犯罪でなくても、向こうの業者は稀覯本を入手すると地図や図版をばらして売ったりするのが、珍しくないようだ。
日本でもこう言うことやってんの?


以前、俺自身が、古本探しでハンターみたいだって言われたことあんだけど、
この本の中でも、蒐集と言う行為は基本的にハントであって、
目当てのものを見つけたときは高揚するけどそれは長続きせず、すぐに次の獲物を探し始める。
得てして、ハンターは獲物を探す過程自体を楽しむようになる、っていうコレクター心理の研究家の言葉が出てくる。
まさにそのとおり(笑)


結局、犯人にインタヴューすることはできないから、はっきりとした理由とかは出て来ないんだけど、
それ以外の地図エピソードが面白いから別に気にならない。
地図の蘊蓄がたっぷり詰まっていて、こないだ読んだ『経度への挑戦』とともに、
この手の話に興味がある人にはオススメ。
専門書じゃないから読みやすいしね。