Путъ Бро

ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

『ブロの道』ウラジミール・ソローキン〈河出書房新社

1908年6月30日、シベリア・ツングース上空で隕石が爆発する。その直後に誕生した大学生のアレクサンドルは、隕石探検隊に誘われて奥地へ向かい、永久凍土の泥沼で氷の塊を発見し覚醒する。彼の真の名はブロ。翌日、同志フェルも目ざめ、二人は光の仲間たちを探し始める。第一次世界大戦ロシア革命スターリンによる粛清、第二次世界大戦…物質世界では、肉機械どもが破壊と建設を繰り返す。神話的三部作の「エピソード1」、『氷』に続いて邦訳刊行。

「ウラー!」
パキーン!
と、氷ハンマーの砕ける音が美しい『氷』*1の続編、ではなく三部作の第一巻。
え〜、『スター・ウォーズ』的な?


最初の覚醒者、ブロが〈氷〉に出会うまでと、それからの人生を描いた物語。
どうやって〈氷〉と出会い、仲間を見つけて行ったのか。
物語的には、特に感想ないんだよなぁ。
かなり平易で、読みやすく、みんなが求めるソローキンではないw
覚醒者、非覚醒者、選民思想だけ取り出すと、宗教小説っぽい。


しかし、この小説の白眉は、〈氷〉と出会って以降、ブロの思考が、人間から変化していく様子が、テキストの形でわかる。
『ロマン』*2の怒涛の終盤に物語性を加えた感じ。
覚醒者にとって必要ないものは、個性が認識されないのか、人間を「肉機械」と呼び、銃を「熱い金属を吐き出す鉄管」などと呼ぶ。
その結果、文章からは固有名詞が消え、彼らの変容した知覚を垣間見られる。コミュニケーションはできるけど、種が違う生命体の脳内をシミュレーション。
〈氷〉語を我々の言葉ではなんといっているのか、連想するのも楽しかったりw


続く第三巻で、どんな世界を見せてくれるのか期待!