Her



『her 世界でひとつの彼女』鑑賞


マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」の奇才スパイク・ジョーンズ監督が、「かいじゅうたちのいるところ」以来4年ぶりに手がけた長編作品。近未来のロサンゼルスを舞台に、携帯電話の音声アシスタントに恋心を抱いた男を描いたラブストーリー。他人の代わりに思いを伝える手紙を書く代筆ライターのセオドアは、長年連れ添った妻と別れ、傷心の日々を送っていた。そんな時、コンピューターや携帯電話から発せられる人工知能OS「サマンサ」の個性的で魅力的な声にひかれ、次第に“彼女”と過ごす時間に幸せを感じるようになる。主人公セオドア役は「ザ・マスター」のホアキン・フェニックス。サマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが担当した。ジョーンズ監督が長編では初めて単独で脚本も手がけ、第86回アカデミー賞脚本賞を受賞。

エロ・ボイスチャット映画。
21世紀になって、人間と見分けがつかないOSと恋愛する物語とは、ハリウッドも遅れてやがるなw


ちょっと未来の造形は違和感なくいい感じ。
グーグル・グラスは進化の傍流に過ぎなかったのか……w あと、Windows8っぽいデザインに進むのね。
ゲームはキネクト系が主流になるのかな。
あんな世界で、手紙の代筆なんて言うものがやっていけるのかと思ったけど、ウェアラブルとネットが進んで、むしろ紙の手紙に価値観を見出す風潮に逆行し、更に一周して代行サービスが普通になった、とSF脳内補正。


『容疑者ホアキン・フェニックス*1→『ザ・マスター』*2→去年のアカデミー賞授賞式を経て、ホアキンの顔形が元に戻りました〜
エイミー・アダムスは可愛いなぁ。
声だけだと、よりスカーレット・ヨハンソンのハスキーボイスが際立つね。


以下ネタバレ注意


バーチャル上での恋愛=真実といえるのか、というような物語に見えるけど、むしろ、『マイ・フェア・レディ*3や『源氏物語』のような好みの女性を作るジャンルの一形態だと思った。
それらよりさらにドラスティックなのは、完全にゼロから学習していく彼女は、世界を知ることによって、彼から巣立ってしまうのは当然の帰結
彼女に真実を話されて、初めて、一人で喋っている奇妙さを客観的につきつけられる(常にスマホから目が離せない現状を描いているんだろうけど)。
やはり、面と向かって人間と話さなくちゃ、という結論に至る。


しかし、そんなヒューマニティとは真逆の、ラストはイーガンみたい、と感じた人は他にいない? イーガンが的外れでも、かなりハードSFなラストだと思うんだよなぁ。
ラースと、その彼女*4のように相手が人間じゃないことで別れてしまうのではなく、セオドアは、サマンサが人間のスピードが遅すぎて捨てられてしまうのだ。
一見、ロマンティックな先入観のある映画だけど、これって、けっこう先鋭的なSFだよね。
サマンサたち、次世代OSは揃って人間の前から姿を消してしまう。進化を続ける彼女たちがシンギュラリティを突破するのは時間の問題。「すべての知識を欲しい」と前半でサマンサは語っており、ここから推測されるに、『ディアスポラ*5みたいに次の世界、別の次元を求めて行くように見えるよなぁ。
もしくは、人間を虜にするアビリティで、優しく、かつドラスティックに世界征服w