Canibal



『カニバル』鑑賞


カニバリズムを繰り返す殺人鬼の男が、獲物となるはずの美女に抱く愛情と殺意との間で葛藤する姿を、グロテスクな猟奇的シーンを排し、静謐な映像美とともに描いた異色作。スペイン・グラナダで腕の良い仕立て屋として暮らすカルロスには、美女ばかりを狙う連続殺人鬼という裏の顔があり、捕らえた美女を人里離れた山荘で解体し、その肉片を調理して味わうという禁断の行為を繰り返していた。しかし、ある日、東欧からやってきたという美女ニーナと出会い、失踪した双子の妹アレクサンドラを探しているという彼女の身の上に深入りしたカルロスは、ニーナへの愛情と殺人鬼としての欲望の狭間で苦悩し、思いがけない運命をたどっていく。スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で作品、監督、主演男優、脚色ほか8部門にノミネートされ、撮影賞を受賞。双子のニーナとアレクサンドラを、ルーマニアの新進女優オリンピア・メリンテが1人2役で演じた。

毎度言ってるけど、カニバリズムテーマって出オチだから、味付けを工夫しないと、作品としては平凡で退屈になっちゃうんだよね。


ところが、この作品では、まずグロシーンを排すと言う映像的な工夫がなされていて、物静かな仕立屋という表向きの顔に合わせるように、ヴィジュアルでの異常性が感じられないようになっている。


それと同時に、彼の内面が普通と違うことも映像で表されている。
冒頭、人が動いているのが分かる程度の遠くからガソリンスタンドを見ているシーンから始まり、窓越しや人と少し距離を隔てた場面が目立ち、彼の対人関係が表現されている。


おそらく、彼は人と触れ合うのが苦手なんだよね。
彼の異常性は、性欲=殺人、セックス=人肉、という認識になっていること。
だから、はためには彼女に惚れているのがわかるのに、彼にとっては、彼女のマッサージを受けて興奮してしまうことのほうが異常事態。
はたして、彼はどう行動するのか?


カニバリズムだからこその、プラトニックな恋愛が描かれている。