Adam Chaplin



『アダム・チャップリン』鑑賞


幼少期から「北斗の拳」を敬愛してきたというイタリアのエマニュエル・デ・サンティが監督・脚本・撮影・主演を務め、同作に代表される日本製バイオレンスアニメを下敷きに撮りあげたスプラッターアクション。街を牛耳るマフィアのボスに最愛の妻を焼き殺されたアダム。復讐を誓った彼は、悪魔の力を借りて超人的パワーを得る。その圧倒的パワーを駆使して、ボスの手下であるマッド・サイエンティストや武装警察部隊らを次々と血祭りにあげていくアダムだったが……。「未体験ゾーンの映画たち 2014」上映作品。

【未体験ゾーンの映画たち 2014】の一本


なんか『テーター・シティ』とテイストが似てるなぁ、と思ったら、同じ映画制作会社なのね、というか『テーター・シティ』の監督の実兄か。リアルバカ兄弟(褒め言葉)


実写『北斗の拳』と言って通用するビジュアル、噴水の如きスプラッタ表現、と80年代の生き残りとしては歓迎する材料は揃ってるんだけど……


技術と資金のマイナスを、「こういう映像が作りたい!」という熱意でカバーすることは可能だと思うんだけど、予算がないからこそ、脚本と設定を練る努力を惜しむのはダメでしょ〜
正直、話がよくわからない。
いや、そう言うと語弊があるか。妻を殺された男が復讐する話なんだけど、設定がまるでわからない。「世界は核の炎に包まれた」的なイントロもないから、どういう世界なのか全く不明。荒廃してそうだけど、普通の街も普通に出てくるし。
ジャギというか、ヒューマンガス様の劣化コピーみたいなボスのスケールが小さい。ラストで、警察も彼の手中にあるらしいことがわかるんだけど、それまでは単なる金貸し? という感じ。なんで機械で血液補給(?)してるのかも語られないし。生きたまま焼き殺すのはたしかに残酷だけど、「金は期日内に返せ」と言ってることはごもっともw 
そもそも、アダムがなんで超人になったのかわからない。うとうとしちゃったんで、もしかしたら見逃した? 背中に憑いてる妖怪っぽいのに力を与えられてるのは推測できるけど。『ベルセルク』のオマージュにもなってる気がするけど、十字架の烙印は『ブラックエンジェルズ』かも?


と、文句ばかりになっちゃうんだけど、監督・脚本・撮影・主演のエマニュエル・デ・サンティが体をケンシロウバリのマッチョに作ってくれているのは天晴。
とにかく、自らが北斗百裂拳で敵の肉体をバラバラに吹き飛ばしたい! という情熱だけはホントに伝わってくる。
人体損壊がひたすら描きたいから、敵一味だろうがなんだろうが、整合性を無視して出会った人間は皆殺し!


嫌いじゃないですよ。この味は。