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影のミレディ (ブックマン秘史2)

影のミレディ (ブックマン秘史2)

時は19世紀末、“静かなる革命”の都パリでは、科学的合理主義が推し進められ、ついには純粋理性の結晶である自動人形による議会が権力を握るようになっていた。女敏腕エージェントとして知られるミレディは、議会の命を受けモルグ街で起こった怪事件の独自捜査を行うことになる。その事件現場にはヴィクトリア朝英国を統べる蜥蜴女王の肖像画が掛けられていた……。魑魅魍魎の跳梁する異形のパリを措く、冒険SF第二弾

〈ブックマン秘史〉第二部。
「前作読まなくても楽しめる」はシリーズ物の常套句だけど、この作品においては、ホントに大丈夫。多少前作*1の言及があるものの、内容的には完全に独立している。


当ブログで何度も言及している『リーグ・オブ・エクストラオーディナリージェントルメン』*2や『ドラキュラ紀元*3と比較しやすい作品だと思ってたんだけど、今回、ちょっと違うかも? と考えを転向。
この第二部は、ミレディ、マイクロフト・ホームズ、マルキ・ド・サドファントマが共演するんだけど、オリジナルの設定を考えれば、それは時代的に無理なんだよね。ちなみに、『バットマン』のジョーカーらしきキャラも出てくるし。
上記している名作に限らず、実在の人物や古今東西のキャラクターを拝借してきて、世界を構築している作品はよくあるけど、基本、共演できる可能性がある(時代的に)キャラクターを集めている。
普通、どうしても、舞台(ここでは19世紀)や元の作品の時代設定に多少なりとも引きずられちゃうと思うんだよね。


ところが、この作品では、オリジナルの要素を残しながら、元々の時代設定を全く無視。三銃士のミレディが19世紀に活躍できるはずはないんだけど、そこに説明はなく、同姓同名でもなく、やはりあの妖婦ミレディ。でも、パム・グリア風w
全くのファンタジー世界ならいざしらず、舞台だけは19世紀のヨーロッパ。しかも、今回はそれにカンフーものもプラス。
それでいながら、「時代がおかしくない?」と思わせないのは、結構な離れ業だと思う。


虚実ないまぜのキャラクターの共演はスチームパンクやガスライトファンタジーに多い気がするんだけど、このシリーズはそれではなく、ミエヴィルの『ペルディード・ストリート・ステーション』*4に近い。
好きなものを詰め込んで、独自の世界を作り上げる箱庭小説。ただし、ここでの箱庭は街ではなく、ヴィクトリア朝という時代。


ホント、色々なキャラが出てきて楽しいんだけど、物語的にはちょっととっちらかっちゃってる印象が強い。
で、なんだったの? という感じ。