Whispers Under Ground

地下迷宮の魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

地下迷宮の魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

午前3時、殺人課のステファノポウラス警部の電話で、ぼくはたたき起こされた。「まっとうな警官なら仕事にとりかかる時間だよ」若い男の死体が、地下鉄ベイカー・ストリート駅の構内で発見されたのだという。すぐに駆けつけて調べてみると、魔法で作られた陶器のかけらで刺されていた。こんな時間になぜ、どうやって地下鉄に入りこんだのか? 捜査を続けるうち、ぼくは古都ロンドンの地下迷宮へと迷いこんでいった……

1巻*1が川の住人だったのに対して、3巻は大地の住人。
メインは魔法の陶器で殺された男の捜査なんだけど、物語はシリーズを通してのグランドホテル方式(ではないか)で、いくつかのネタが同時進行。
2巻*2で登場した黒幕、顔のない魔術師は今回は登場しないも、ピーターたちを挑発し、謎めいた中国の術師が接近し、レスリーは弟子入りし、ピーターの姪のアビゲイルは今後活躍しそう。


『キング・ラット』*3や『ネヴァーウェア』*4など、地下を舞台にしたファンタジーがイギリスに多いのは、地下鉄が世界で初めて開通したことと無縁でないんだろうね。
ゴリゴリの刑事でも魔術師でもなく、その両者に対して皮肉っぽいピーターのひとり語りがなんともゆるい感じを醸し出しているんだけど、今回は建築家志望だった彼が、ロンドン地下世界の良いガイドになっている。
この世界のお隣だけど、普通の人間の目には触れないゴブリンマーケットや地下の村は不気味で魅力的。


FBI捜査官はもうちょいなんか欲しかったなぁ。