The Zombie Survival Guide

ゾンビサバイバルガイド

ゾンビサバイバルガイド

ゾンビの性質、身体的特徴、行動パターン、ゾンビと戦うための適切な武器、戦闘技術、ゾンビへの攻撃法、ゾンビからの完全な防御法、ゾンビ大発生中の逃亡法。人類最大の脅威ゾンビ襲撃から一般市民が生きのびるために。全人類必携。

映画も小説も、ゾンビものが訳されるのが定番化してきたなぁ。
こうなってくると、どうやってオリジナリティを出すかがポイントになってくる。個人的にはあまりにオリジナリティありすぎると、逆効果だと思ってるんだけどね。
そんな中で飛び抜けて傑作といえるのが『ウォーキング・デッド*1であり『ワールド・ウォーZ*2。両者とも、のろのろと、しかし大群で向かってくる死体、という古典的なゾンビ像なのが興味深い。


ゾンビはビジュアル先行型のモンスターなので、映画や漫画、ゲームのほうが食い合せがいい。しかし、『ワールド・ウォーZ』はゾンビそのものはあまり描かず、それに関わった人々の証言によって、逆に世界的な広がりを物語内に構築したゾンビ小説の傑作。


今作は『ワールド・ウォーZ』の原型となったフェイクハウツー本。
『ゾンビの作法』*3を先に読んじゃってたんで、ちょっと軽く見てたんだけど、これがすごい真面目なサバイバル本でした。
オタク的くすぐりはなく(チャック・ノリス・ファクトみたいな)、フィクションで見栄えのいいガジェットを検証し、否定していく。
例えば、ノコギリ状の刃がついたサバイバルナイフは肉に食い込むためオススメできないとか、チェーンソーのガゾリンは確保できるのか?とか。


カタストロフィはいつか来るだろうけど今ではないし、来たとしても自分はなんとかなるんじゃないか、という認識は早々に捨て、常に備えておけ、というのは他の災害でも全く同じなんだよね。あの地震を経験してもなお、十全な準備は難しい。娯楽の必要性を何度も説いてるのも素晴らしい。


巻末に、歴史上のゾンビとの遭遇戦が時系列順で紹介されていて、これが『WWZ』っぽくて面白い。


このサバイバルガイドで否定していることを、いちいちやってるのが映画版『WWZ』。いっそのこと、このガイドを熟読していたからこそ助かった、なんてメタな構造にすればよかったのに。