待っていたのは

待っていたのは 短編集

待っていたのは 短編集

ブッツァーティ祭りつづき。

現実の背後にひそむもう一つの世界。そこに仕掛けられた罠にひとたび絡めとられたが最後、もはやなす術はなく、ただ終局的な破滅を「待っている」ほかはない……日常の裏側の世界の陥穽にはまってしまったものの恐怖と苦悩を描く表題作のほか、寓意と幻想にみちた15の物語


 収録作品
・「夕闇の迫るころ」Quando I’ombra scende
・「忘れられた女の子」La bambina dimenticata
・「夜の苦悩」Il dolore notturno
・「鼠」 I topi
・「バリヴェルナ荘の崩壊」Il crollo della Beliverna
・「世界の終わり」La fine del mondo
・「戦さの歌」La canzone della guerra
・「アナゴールの城壁」La mura di Anagoor
・「人間の偉大さ」Grandezza dell’uomo
・「待っていたのは」 Non aspettavano altro
・「水素爆弾」All’idrogeno
・「時を止めた機械」La macchina che fermava il tempo
・「友だち」Gil amici
・「クリスマスの物語」Racconto di Natale
・「冒涜」Il sacrilegio

これで短篇集は3冊目だけど、嫌な話が多くて、これが一番趣味かな。


出かけた先で「鍵閉めてきたっけ?」という不安が浮かぶことは誰にでもあると思う。「暗がりに怪しい人がいたら」「ちゃんと行き先に付くだろうか?」そんな誰にでもある漠然とした不安。ブッツァーティの作品は、その「漠然」としたものの必然性を高めていく、確固とした形を取らせるのが上手い。「不安」が具象化してしまえば、もうそこからは逃れられない。
個人的には、不安感は強い方なのでよく分かる。特に「待っていたのは」は、しばしば旅行に行くこともあるだけに凄い嫌。あとは嫌なピタゴラスイッチの「バリヴェルナ荘の崩壊」も印象深い。


お気入りは、
・「忘れられた女の子」
滞在先で、ふと娘のことが頭をよぎる。
確かに、知人に預けたはずだが、本当にそうだろうか?
家に置いてきてしまったのでは……


・「鼠」
知人の家に住み着いている鼠。
毎年その群れは大きくなっていき……


・「バリヴェルナ荘の崩壊」
巨大な廃墟のバリヴェルナ荘。
暇だったので、ちょっと壁のぼりをしていると……


・「アナゴールの城壁」
地図にも載っていない町。
そこは巨大な壁に囲まれていて、中の様子は全くわからない。
幾つもある門の前には、開くのを待っている人々が集落を作っていた。


・「人間の偉大さ」
浮浪罪で牢屋に放り込まれた老人。
彼は大モーロという立派な名前を持っていたのだが、それにまつわる話を語り始める……


・「待っていたのは」
見知らぬ駅で降りた二人。
涼を取るために池に入ったところ、わけも分からず避難され、群衆に捕まってしまう……


・「時を止めた機械」
時間のスピードを遅くする機械が発明される。
そのフィールド内ならば、人は長生きできるのだ。
そこで、病に冒された人々がその町で暮らすが……