ALFRED HITCHCOCK MYSTERY ANTHOLOGY SERIES



『蝿人間』アルフレッド・ヒッチコック監修〈ケイブンシャジーンズブックス・ヒッチコック・スリラー・シリーズ〉
表題作が気になり、調べても内容がわからないので着手。


・「蝿人間」……シド・ホフ
幼少時、海水浴に行く途中にあった見世物小屋
そこにいる蝿人間がどういうものなのか見てみたい兄弟。
あるとき、その呼び込みに殺虫剤を買ってきてくれと頼まれる。
それを何に使ったのか気になる弟は……
正体不明の蝿人間という幻想味、それが実体化した時の恐怖。
少年の日の魔法が呪いへと変じる佳作。


・「桃」……ジャック・ウェブ
桃の収穫に流れ者を雇った農園。
妻はその男が気に入らなかったが、夫はまるで無頓着。
ある夜、その男が彼女を脅してきて……


・「著作権」……エドワード・ラッシー
老婦人がひき逃げされる。
そのまま迷宮入りするが、刑事が最近話題の映画を見に行くと……


・「命の値段」……フレッチャー・フローラ
押入れの中でじっとしているのが好きな少年。
その隙間から外を見ていると、母親が階段を落ち、死ぬのを目撃する。
父は階段の補修を怠った家主のせいだと訴える。
そこに保険調査員がやってくるが……


・「バーゲン狂」……ジェームズ・ホールディング
ワシントン並の正直者と評される男。
彼はどんなものでもバーゲンで買うという癖を持っていたが、街の靴屋だけはそれが果たせていなかった。
ある日、靴屋に行くと新人店員がいて、まだ値段を覚えていないと言われ……
小咄好きとしては、これはお気に入り。


・「掟」……ジャック・リッチー
犯罪組織の身代わりで入所してきた下っ端。
心臓が弱いことを知り、盗んだ金の分前と引き換えに楽な作業に。
しかし、組織を憎む所長により重労働を課せられ、死んでしまい……


・「警官に手を出すな」……ジェームズ・ホールディング
臀部が異常に大きく、カンガルーとバカにされてきた少年は、善良な警官になっていた。
あるとき、寡黙だが闘志ある新人と組まされ、名コンビになる。
カンガルーの昔からの知り合いが盗みを働いているところに出くわし、新人は彼に飛びつくが……
バディものとしてなかなかいいんだけど、デカ尻はあまり必要性がないような。


ヒッチコック編という体裁のアンソロジーって結構あるけど、これって『ヒッチコック劇場』とかの原作に使ってたもの?
各作品にヒッチコックによる序文があり、完全に脳内で熊倉一雄に変換(笑)
お気入りは、「蝿人間」「バーゲン狂」「警官に手を出すな」あたり。


ケイブンシャジーンズブックスは、ちょっと空いた時に読める分量がいいけど、製本が硬くて、開こうとすると割れちゃいそうで、甚だ読みにくい。