Asylum Piece

アサイラム・ピース

アサイラム・ピース

異国の地で城の地下牢に囚われた女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる人々――孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。


 収録作品
・「母斑」The Birthmark
・「上の世界へ」Going up in the World
・「敵」The Enemy
・「変容する家」A Changed Situation
・「鳥」The Birds
・「不満の表明」Airing a Grievance
・「いまひとつの失敗」Just Another Failure
・「召喚」The Summons
・「夜に」At Night
・「不愉快な警告」An Unpleasant Reminder
・「頭の中の機械」Machines in the Head 
・「アサイラム・ピース」Asylum Piece
・「終わりはもうそこに」The End in Sight
・「終わりはない」There is no End

正直、『氷』*1はさっぱりで、これもどうかなぁ、と思って着手。
結論から言うと、あんまりカヴァンは趣味でないなぁ。『氷』よりはよかったけど。


作品に共通しているのが、正体がはっきりと示されない苦痛、それを減じられるはずなのに敵対してしまう権威、上から射す光、没個性な建物、主人公を世話してくれるメイド。
これって、病院(入院)風景だよね。作者の人生からすれば精神科か。
そのインナースペースをそのままアウトプットした作品ばかりなので、状況をどうしようもできない閉塞感、自分自身でもコントロールできない無力感がストレートに出ている。


それらの集大成とも言えるのが「アサイラム・ピース」で、彼女たちがどう見えているのかというインナースペースと、彼女たちがどう見られているのかという客観的な姿が同時に描かれている。


変な話目線だと、「母斑」「召喚」あたりがよかったかな。


それにしても、カヴァンを「SF」レーベルで出してたサンリオは凄いな。