The Dark Knight Rises

『ダークナイト ライジング』鑑賞



まぁ、こんなもんじゃない?


『ビギンズ』*1はあまり面白いとは思っておらず、『ダークナイト*2ヒース・レジャーによるところが大きいため、実は『アヴェンジャーズ』ほどテンション高めてなかったんだよね。だから、予想を大きく上回ることも、下回ることもなかった。ちなみに、『アヴェンジャーズ』はCMの段階でカッコよすぎて涙腺緩む(笑)


165分という長尺にもかかわらず、尺が足りないというか、編集作業しすぎて、わけわかんなくなっちゃってんじゃないの? という感じ。
かと言ってつまらないわけではなく、むしろ、この長さを全く退屈させない技量はさすがだと思う。
持たざるものが立ち上がる、政治の腐敗を浄化すると普通の物語ならば主人公側の行動理念をヴィランが掲げるバットマンならではの逆転にした構図。仮面こそがアイデンティティと化したバットマンもフリーク、というテーマも盛り込まれている。
でも、それと同時に、あちこちが雑なんだよなぁ。『インセプション*3は結構上手く組み立てられてたのに。


以下、ネタバレ気味になると思うので、未見の方はスルーの方向で。


構成は『ダークナイト・リターンズ』*4+『ナイトフォール』って感じかな。
バットマンを知ってるならば動向を期待せずにはいられないゴードン=レヴィット演じるブレイク、肉体的にも行動的にも重厚な存在感のベイン、想像以上にキャラが立っていたセリーナ。『アーカム・シティ』みたいな格闘シーンやバット・ポッドのタイヤぐるぐるとか、いいとこ探しは色々出来るんだけど、同じくらい粗もあるんだよね。


初っ端にして一番気になったのが、ハイジャック(?)中の、博士の血を取るシーン。もしかして、あれで身代わりの死体を作るつもり!? 何やってんのかよくわかんないけど、身代わりに血を送るにはえらく短時間だし、そもそも圧の問題で流れないし、それ以前にあんな状況で空気入ったら博士死んじゃうよ? っていうか事故死のDNA検査って血液でやるの? 本筋にあまり関係ない細部だからこそ、ちゃんと処理して欲しかった。その適当さに、かなりドン引き。


セリーナ(キャットウーマンとは呼ばれない)は悪女でツンデレでかなりいんだけど、ベインとの関係が全く語られないから行動に説得力がなく、物語からちょっと浮いちゃってるんだよね。ブラックゲートに投獄される必要性も展開上いらないし。この辺は編集で端折られているようにも見える。
デント法もよく説明されないから、ブラックゲート開放の意味も弱いし。あの時、アーカムアサイラムはどうなってたの?


マスクしてても、トム・ハーディだとわかる存在感は素晴らしい。
ベインのお題目は、支配者の軛を逃れ、個人が自由になれ、という革命思想なんだけど、実は彼の恐怖そのものが民衆を支配している、という構造……ではないんだよね。終盤ではそれは有耶無耶に。あそこまで正論吐いて、行動を示しながら、それは嘘っぱちで、自分で嘘をついていることにちゃんと気づいている。しかも、それが女のため!? とモヤモヤした気分に。


比較的マンガ的だった『ビギンズ』に対して、リアルに寄った『ダークナイト』、そこでまた「闇の同盟」なんてマンガ的なものを出す必要はなかったんじゃないかなぁ。環を閉じるという意味なのかもしれないけど、それを組み込んだから、ベインがおかしなことになっちゃってる。ラーズ・アル・グールも出さなくてよくね?


あんなんで背骨治るの!? とか、核爆弾積んでるんだから無闇に撃つなよ、とか色々あるんですよ。


と、アメコミ映画だけに重箱の隅をつつきましたが、ラストの「ロビン、キター!」でプラマイゼロ(笑)
あと、皆勤賞のスケアクロウは三作中一番の活躍。


面白いかどうかと問われれば、間違いなくよく出来た作品。
適当な映画に行くよりは、確実に楽しめるはず。
個人的には、アメコミヒーローものは脳天気さがあった方が好きだけどね。