Bellflower

『ベルフラワー』の試写会に行ってきた。





まずは、エヴァン・グローデル監督(主演)と作家の樋口毅宏氏とのトークショー


Q「初めて『マッドマックス2*1を見たのはいつ?」
A「小学生の頃に親友と。世界が終わったらどうしようかと考えた」
Q「ヒューマンガスなのはなぜか?」
A「当然、子供の頃はマックスが好きだったんだけど、成長するにつれヒューマンガスは面白い人なんじゃないかと思い始め、砂漠で裸で人殺しまくって最高!」
Q「ウェスはダメなのか?」
A「彼はセクシャルな要素もあり、なんと言っていいのか困るキャラ」
Q「DT臭がするんですが?」
A「ノーコメント(笑)」
Qメデューサ号がスカイラークを改造したものなのは何故?」
A「マッスルカーを作るには60〜70年代の車が最適で、費用の問題でスカイラークを選択。3000ドルもしていない。とにかくお金がなく、撮影中も必要なくなった機材は売っていった」
Qメデューサ号が愛用車なのは本当?」
A「唯一残った自家用車だからね。買い物にも行ってるけど、ガソリンを食うから毎日は無理(笑)」


というわけで、『マッドマックス2』は必修。
ヒューマンガス様(様は大切)好きなら尚よし。


続いて本編を鑑賞。

『マッドマックス2』の悪の首領、ヒューマンガスに憧れる親友同士のウッドローとエイデン。働く気もない二人はプロパン爆破実験や火炎放射器づくりをしながら、日がな銃火器の破壊力追求に明け暮れていた。ある晩ウッドローはミリーという女と出会い、思いがけなくも激しい恋に落ちる。しかし彼女の裏切りを知ったウッドローは、怒りと絶望から正気を失い、火炎放射器を手に狂おしい妄想の世界へと突き進んでいく―。

変な映画だったなぁ……
少なくとも、ポスターのイメージのような作品ではないことは確か。


「仕事は何?」と訊かれ、
火炎放射器を作ってる(キリッ)」と答えるボンクラ映画。


こおろぎ早食い競争でロマンチックな音楽が流れたり、仕事もせずに火炎放射器を手作りしたり、ヒューマンガス様讃歌を唱えたり、前半は珍妙な青春モノの体裁を取っているんだけど、彼女に裏切られてから、おかしなことになっていく。
現実描写と内面描写に境目のない、マジックリアリズム的な映像がラストまで続く。


なんか、人には薦めにくいけど、個人的には嫌いじゃないなぁ。
人付き合いに不器用な主人公が、女の子に恋して、上がりながらも一生懸命になる感じとか、よくわかるし。
あとは、出っ張ったエンジンと火炎放射器のフォルムは男の子心をくすぐるよね。


以下、ネタバレ注意。
特に上映前なんで。


おそらく、主人公の妄想が紛れ込んでいるんだけど、それがどこからなのか。
事故に遭ってから、と考えるのが普通かな。
それ以降に、常軌を逸した(幻想的な)シーンが多くなる。非常に美しいメデューサ号の疾駆。火炎放射器を構えて街中を歩く。ミリー箱を燃やすシーンが二度あるのがポイント。
また、展開も極めて主人公に都合良く進む。この作品のアイコンにもなっているメデューサ号は、実は唐突に出てくるんだよね。コートニーの自殺は、主人公のモテモテ表現だし。
キノコ雲が立ち上るシーンによって、それらすべてが主人公の願望であることが示される。


ミニチュア写真のようなピントの画面が度々出てくるんだけど、それが妄想の現れる前触れで、シャープな画面は現実ととれなくもない。


更に突っ込むと、物語などなく、すべて最初から、監督(=主人公)のベルフラワー通りでの想い出とそれにまつわる妄想がフィルムに写っているに過ぎないのかも、とメタな観方も。
メデューサ団に入れて、なんて言う女の子がいる?(笑)


ラストのヒューマンガス様讃歌は傑作。
「ヒューマンガス様はいちいち女に電話を入れない」って、あそこに電話ないから。